2011年10月26日水曜日

筑波山の湿球温度とは何?  湿球温度と気温・露点の相関


筑波山の湿球温度とは何?  湿球温度と気温・露点の相関

1.湿球温度と気温・露点の相関
・・・申し訳ありませんが・・・少し数学をつかいます。・・・
偶然ですが、湿球(温度)と露点(温度)に強い相関があったことを「筑波山の湿球温度とその相関」で報告しました。
湿球は気温とも強い相関があります。
湿球は気圧、気温、露点(水蒸気圧)によって決まります。

CpT+mgZ+(E(Td)/P)×L=CpTw+mgZ+(E(Tw)/P)×L  (1)

Cp:定圧モル比熱 T:気温 m:空気1モルの質量 g:重力定数 Z:高さ
E(Td):蒸気圧(水蒸気の分圧) Td:露点温度 Tw:湿球温度 P:気圧
L:1モルの水が水蒸気になるために必要なエネルギー


観測場所は筑波山頂で高さは一定です。
気圧Pは大きく変動しませんので、Pを一定とすると湿球温度Twは
Tw=Tw(T,Td)
とかけます。
常識的に気温が露点=水蒸気圧→水蒸気の量に影響を与えるとは考えられません。
こうした状況でTwがT及びTdとの相関係数が高いとは

Tw=Tw(T,Td)=aT + bTd +c                          (2)

になると言うことです。
aとbは(1)でTd=Constとして
dTw/dT=a
そして、T=Const(=b)として
dTw/dTd=b
で求められます。


((1)からa、bを求めるのは難しくありませんが興味のある方はEをTwとTdでそれぞれ偏微分した値は違うことに注意して下さい。)

(2)の関係が実在空気に存在すると言うことです。

5月12時のデータを示します。
上のグラフ「5月12時 気温対露点」は、たて軸が気温T、よこ軸が露点Tdの生データです。
湿球(温度)Twは統計処理したら気温と露点を足して2で割ったような
Tw=0.45T+0.48Td+0.81
で近似されました。



yは生データの気温(=X1)と露点(X2)で求めた湿球の予想です。
(切片Cは0かもしれませんが・・・一応残しておきました。)

低気圧や前線の通過等の変化がなければ、16時の湿球温度は翌朝の最低気温予想に利用できるかもしれません。
(湿球温度は全エネルギー、温度は乾燥空気のエネルギー、露点は水蒸気のエネルギー に関係し位置エネルギーは一定です。エネルギー保存則から温度を湿球温度と露点で予想ができそうです。気温予想は相対湿度を使っていると聞いたことがあります。統計的に相対湿度を使い気温予想するよりましかもしれません。)

2.地表温の日変化
さて、数学は終わりで俄田引水理論です。
筑波山シリーズを読んでくれた方はおわかりでしょうが・・・
地表温度は南中時刻を過ぎると冷え始め、夕方湿球温度付近に落ち着きます。


日照で加熱されているのに、加熱が弱まると冷え始めるのは「加熱(日照)」と同時に何らかの「冷却システム」が働いていると考えられます。
冷却システムがなければ、加熱されている間は地表温の昇温ペースにぶっても昇温し続けるはずだからです。
また、地表温の下降の原因が放射なら日照がなくなっても地表温は下がり続けるはずです。
「冷却システム」は湿球温度または湿球温度に関係する下限が存在しているようです。

 冬は地表温のほうが*低なりますが夜間に湿球との相関が高いことは変わりません。
空気には地表面を湿球温度にしようとするメカニズムがありそうです。

*Lは水蒸気が液体の水になるとして計算している点に問題があるかもしれません。私の宿題にしておきます。


こうした現象や実在大気の温度減率を放射冷却や温室効果のような放射理論で説明するのは困難…と言うより間違えだと思います。
「放射冷却は冗談だ」と筑波山のデータが示しています。

*実在大気の温度減率は相対湿度が100%に達していなければ乾燥断熱減率になるはずです。今の気象の理論では、曇りや晴れの日は乾燥断熱減率になるはずです。
??1月グラフ注意??それにしても、1月の7、8時は地表面がまだ気温より低いのに気温が上がり始めます。地表が1.5mの空気を暖めるのは不可能です。(湿球が上がり始めるのは理解できるが…)何が空気を暖めているのだろう????地上1.5mの空気中に可視光を吸収する物質があるのかもしれません?
単純に空気を理想気体ととらえる悪習は止めるべきですね。空気の物性を研究すべきです。
余計な事が長くなりました。


3.相関が高い月低い月

湿球対地表の相関係数が一番小さい5月と大きい9月を中心に見てみます。

3-1 5月の相関

5月は昼間の長い月です。


9時前の地表温変化が気になりますが・・(過渡現象かも?)

やはり南中時刻を過ぎると地表温は下がり始め、夕方湿球温度に落ち着きます。

湿球と地表の相関が一番高かったのは0.93(4時)、一番悪かったのは0.30(9時 )でした。
相関係数が低くなるのは地表温が上がる日中です。原因は日射による加熱と考えてよいでしょう。

次は5月4時の湿球対地表温のグラフで横軸が湿球で縦軸が地表温です。



湿球は気温と露点を足して2で割ったようなものですから気温と露点を加えて見ましょう。


気温と露点の境界は気温と露点が同じ温度で相対湿度100%の直線です。
y=xの直線の代わりに使えます。
この境界の上に分布する点は湿球より高く、下に分布する点は低いことになります。
地表温はこの境界近くの上下に分布していることがわかります。

次に地表温と相関の悪かった9時のグラフです。

 相関係数は0.30ですからほとんど無相関に見えます。





   
地表温は気温と露点の境界、湿度100%線の上に分布して湿球温より低くなりません。日照により加熱されているからだと思います。
1.5mの高さにはひょっとしたら湿球温度に近いオーブのような水粒が浮いているかもしれません。

見通しが10km以下の「もや」とは
微小な浮遊水滴や湿った微粒子により視程が1km以上、10km未満となっている状態。
だそうです。


12時には相関が少しよくなります。
確かに、湿球温が高いと地表温が高い傾向があるように見えます。
このあと相関係数は上がり続けますから、湿球温と地表温には弱い相関がでてきたと言えそうです。


再び相関が高くなった17時のグラフを見ます。




5月ですから、17時でも十分に日照はあると思いますが、湿球温度と地表温には0.90と強い相関が表れます。




地表温は湿球温度より低くなることはありますがほとんど地表温は湿球温より高くなっています。

18時になると、地表面は湿球温度が湿球温より低くなるケースが増えるようです。
18~19時に地表温≒湿球となり安定するようです。

3-2 9月の相関
5月に比べると変化は小さいのですが、やはり南中時刻を過ぎると地表温は下がり始め、夕方湿球温度に落ち着きます。
湿球と地表の相関が一番高かったのは0.97(3時)、一番悪かったのは0.70(11時 )でした。

3時の相関は



  


湿球-地表温の最大、最小、平均を見ると3.4℃、-3.0℃、0.05℃となりました。
相対湿度が気になるかもしれませんが、平均相対湿度は91.3%でいつも雲(霧)の中と言うわけではなさそうです。

11時
相関係数は0.70で湿球が高いと地表も高くなるような傾向は読み取れると思います。



傾いたサンドウィッチのような分布になりました。
湿球温と露点の相関は時間にかかわらず非常に高い値を示していますが、確かにこの時間も露点の分布も相関が高いことグラフからも推定されます。
この時間の露点と地表温の相関係数は0.53で湿球温と地表温の0.70より悪かったです。

  
9月は17時に地表温は湿球温度になって安定します。
17時の相対湿度の平均は90.0%でした。

 *********************************
データは「筑波山気象・水文観測プロジェクト」からダウンロードしました。
筑波山気象・水文観測プロジェクトのホームページ
http://mtsukuba.suiri.tsukuba.ac.jp/
データがダウンロードできるページ
http://mtsukuba.suiri.tsukuba.ac.jp/sub6.html

機器構成
http://www.weather.co.jp/mtTsukuba/drawing/mtTsukuba_gif_2.gif





大昔、何かの読み物に
「永久に壊れない住宅の家賃は0円になる」
と書いてあったような気がします。
理論とは現実をよく映し出しますが、理屈はなんとなく納得しましたが・・・
やっぱり現実とは違うと面白く思った記憶があります。

放射性物質はいったい何年間管理しなければならないか私はしりませんが・・・
1千年、1万年、10万年・・・もっと?(何かで読んだとおもうのですが・・何故しらないのだろう・・・・)
おそらく1千年ではないでしょう。
私の寿命から考えると数千年は永久と同じです。
放射性物質はどうも永久に管理しなければならないようです。
永久にコストがかかるわけです。
たぶん現実です。
発電コストの試算はインチキです。

2011年10月22日土曜日

筑波山の湿球温度とその相関

各相関係数を計算してみました。
要素は、湿球温(度)、地表温(度)、-1センチの地温(度)、露点(温度)です。
から再録しておきます。要素等はこちらを参照してください。

CpT+mgZ+ETd)/P)×LCpTw+mgZ+ETw)/P)×L   (1)

CpTはエンタルピーと呼ばれるエネルギー
mgZは水蒸気を含む空気の位置エネルギー
残りは水蒸気を液体にした時のエネルギーです。


Cpθe= CpT+mgZ+ETd)/P)×L

で(1)左辺は相当温位の中身であることが分かると思います。
気象で使う相当温位は、1000hPaの位置を基準(0メートル)としています。
おかげで、300hPaの相当温位予想の精度(安心して使ったのは強風帯の予想ぐらいだったかな?)が悪くなっています。
(理由:例えば850hPaの要素から計算して1000hPaの高度がちょうど地表面になったとしても300hPaの要素から1000hPaの高度を計算すると地中の深い所になり、この位置エネルギーの違いが誤差になっています。)
飽和相当温位と湿球温度の関係は下図のとおりです。


降水粒子が適当な大きさがあるなら、湿球温度が降水粒子の温度となります。
各気圧面の相当温位が分かれば、湿球温度は計算できます。
余計なことですが、これで雨雪判別ができます。





 
湿球 対 地表
    MAX    MIN   MEAN
01月  0.93(03)  0.63(10)     0.86
02月  0.93(03)  0.47(11)     0.85
03月  0.95(06)  0.36(10)     0.83
04月  0.94(18)  0.45(10)     0.83
05月  0.93(04)  0.30(09)     0.77
06月  0.96(00)  0.56(12)     0.84
07月  0.93(20)  0.66(09)     0.85
08月  0.94(17)  0.69(10)     0.88
09月  0.97(03)  0.70(11)     0.93
10月  0.93(06)  0.54(10)     0.87
11月  0.94(04)  0.73(11)     0.89
12月  0.94(07)  0.67(11)     0.89

湿球 対 -1センチ地温
    MAX   MIN     MEAN
01月  0.64(10)  0.44(12)      0.58
02月  0.68(23)  0.54(12)      0.62
03月  0.80(07)  0.54(13)      0.71
04月  0.85(08) 0.61(12)      0.77
05月  0.84(06) 0.50(10)      0.72
06月  0.91(03) 0.64(12)      0.82
07月  0.84(02) 0.65(11)      0.78
08月  0.87(06) 0.59(11)      0.80
09月  0.96(09) 0.74(11)      0.89
10月  0.86(17) 0.74(11)      0.83
11月  0.88(09) 0.83( 04)     0.86
12月  0.85(09)  0.76(14)      0.82

湿球 対 露点
     MAX   MIN   MEAN
01月  0.93(03)  0.75(14)     0.88
02月  0.93(07)  0.72(14)     0.87
03月  0.94(23)  0.76(14)     0.89
04月  0.91(00)  0.63(14)     0.82
05月  0.92(20)  0.77(13)     0.87
06月  0.96(22)  0.92(14)     0.94
07月  0.96(04)  0.95(21)     0.96
08月  0.97(09)  0.94(05)     0.96
09月  0.98(09)  0.96(13)     0.97
10月  0.96(08)  0.92(12)     0.95
11月  0.95(04)  0.85(14)     0.91
12月  0.95(01)  0.85(14)     0.93

参考に9月のグラフを示します。
9月の相関係数

  「湿球と地表」と「露点温度と地表温」の相関係数は全て
       湿球と地表 > 露点温度と地表温
   となりました。
   特に考えがあって、湿球(温度)と露点(温度)の相関を見たわけではないのですが・・・
   かなり高い相関がありました。
   湿球と気温にも相関がありそうです。(次回報告)
    参考に気温と露点の2月の相関を示します。

            黄色の線は相対湿度が100%になる線です。
        とても、相関があるとは言えません。

       次回は湿球温度が気温や露点温度と強い相関があったことを報告します。
確かに、気圧、気温、露点温度で湿球温度は決まるのですが・・・

データは「筑波山気象・水文観測プロジェクト」からダウンロードしました。
筑波山気象・水文観測プロジェクトのホームページ
http://mtsukuba.suiri.tsukuba.ac.jp/
データがダウンロードできるページ
http://mtsukuba.suiri.tsukuba.ac.jp/sub6.html

機器構成
http://www.weather.co.jp/mtTsukuba/drawing/mtTsukuba_gif_2.gif

気温は地表から 1.5メートル
地表温は地表
地温は地表から マイナス1センチ
の温度です。

相当温位の誤差にについて・・・

温室効果のメカニズム (批判的立場から)

5.成層圏へのエネルギー輸送

で書いたのですが・・・

上の図は気象庁の解析なのです。

上空に行くほど相当温位が高くなっています。(ピンク色が濃くなっている)原因の一つには基準面を1000hPaにしていることがあると思います。

上空に行くほど相当温位が高いと安定と判断されます。

次に図は地表面を0メートルを基準とした福岡の温位エマグラムです。

上空15000までほとんど等相当温位です。

地上で周りから少しでも高い相当温位の空気が流れ込めば15000までいっきに上昇することが見慣れた方はわかると思います。



2011年10月11日火曜日

筑波山の4つ目の温度 湿球温度

放射冷却と呼ばれる現象は、地表温が湿球温度に強い相関が認められました。

ところで気象現象を温度を中心に考えるのは適切なことなのでしょうか?

温度にCvを掛けると空気の内部エネルギーになり、Cpを掛けるとエンタルピーと言うエネルギーになります。
温度で気象現象を語るのは空気の内部エネルギーやエンタルピーだけで語っていることになります。
明らかに水蒸気の形でもつエネルギーが欠けています。
地表面の温暖化などは温度だけで議論すると水蒸気のエネルギーが欠けてしまい適切な議論にならないと思います。

湿球温度は水蒸気の形のエネルギーを含んでいます。
また、湿球温度(絶対温度表示)に位置エネルギー÷Cpを加えると相当温位になります。
カン違いでしたすいません。仮想的な水蒸気量も考えなければなりません。
湿球温度は高さを気にしなければエネルギーと考えてよいでしょう。
高さが問題になるときは水蒸気の形のエネルギーと位置エネルギーを含む相当温位が適当だと思います。
乾燥断熱減率 乾燥断熱減率と温位エマグラム 温位エマグラムと湿球温度 ―雨雪判別― 参照

温度より湿球温度で議論したほうが適切な現象がありそうです。
考えてみると、物理現象はエネルギー保存則を用いるのは当然のことです。


今回は、湿球温度と地表温の関係を整理しました。
グラフを見てください。






夜間に地表温が湿球温度より低くなる季節(1212月)がありますが他はほぼ地表温が湿球温度になるようです。

おそらく、空気中に浮いているオーブのような水粒が地表に落下するのだと思います。
本来、空気成分の分圧比は高さによらず一定(大気成分とギブスのパラドックス 参照)のはずなのですが水蒸気圧は上空に行くと極端に減ってしまいます。
この差がオーブのような雲粒(?オーブを雲粒と呼べるか疑問ですが・・・)になると思います。
次のグラフは2006年の時間別(048121620時)の湿球温度と地表温の相関です。
縦軸が地表温、横軸が湿球温度です。
0時相関係数 0.99 回帰式 Y=0.97X0.65
04時相関係数 0.99 回帰式 Y=0.96X0.73
08時相関係数 0.98 回帰式 Y=0.88X0.25
12時相関係数 0.72 回帰式 Y=0.72X+0.63
18時相関係数 0.97 回帰式 Y=0.91X0.52
20時相関係数 0.99 回帰式 Y=0.95X0.63

放射冷却と呼ばれる現象より強い相関がでました。
オーブのような降り始めは、十分に地表面は冷却されず湿球温度が高く、また、降り積もる目に見えない粒子が小さければその温度は湿球温度よりかなり低くなる可能性があります。(湿度100%以上でないと雲粒はできないか? 参照)
このような事柄が放射冷却と呼ばれる現象時の相関が悪くなる原因と想像します。
「夜間に雲が広がり地表の熱が逃げないなどとする」論があるようですが理論として成り立ちませんし、こうした現実とも矛盾します。

データは「筑波山気象・水文観測プロジェクト」からダウンロードしました。
筑波山気象・水文観測プロジェクトのホームページ
データがダウンロードできるページ

機器構成

気温は地表から 1.5メートル
地表温は地表
地温は地表から マイナス1センチ
の温度です。