学生時代、乾燥断熱減率の計算を何十回も繰り返した気がします。
いくら計算しても分かった気になれなかったのです。
これは数学なのか?物理なのか?当時は数学をしていたのだと思います。
少しエントロピ-が分かった気がしました。
1乾燥断熱減率 静水圧平衡 熱平衡
さて、熱平衡とは熱も物質も出入りがなく、なんの変化も起こらなくなった状態です。
理想気体では1モル当たりのエントロピーがどこの場所でも同じになります。
もし、違えばまだ熱平衡に達していないので熱平衡になるように変化して全体のエントロピーは増加します。
静水圧平衡は下図のように力のつり合いを考えます。
特に熱平衡は仮定していません。
上空の温位が高ければ対流は起こりませんから静水圧平衡は成り立つとも考えられます。
静水圧平衡は上図のように力のつり合いから求められます。
AP(Z+⊿Z)+Mg=AP(Z) (1-1)
となります。
AP(Z)+⊿ZAdP(Z)/dZ+Mg=AP(Z)
となり、⊿ZAは 高さ×面積 ですから ⊿ZA=Vは体積です。
(1-1)は
VdP(Z)/dZ+Mg=0 (1-2)
となり体積V中にnモル個あるとするとmを平均分子量で
M=nm
となりますから
V(Z)dP(Z)=-nmgdZ (1-3)
となりました。
おそらく、静水圧平衡で言えるのはここまでです。
上空に向かって温位が高く大気が安定なら(1-3)は成り立ちます。
しかし、気温減率が乾燥断熱減率になりません。また、上空のエントロピーは小さくなってしまいます。
後でみるように乾燥断熱減率は(1-3)から導かれますが(1-3)だけでは結論できないのです。
他に条件が必要になります。
①「静水圧平衡は熱平衡でもある。」あるいは、②「静水圧平衡に加え熱平衡も必要である。」
①は本来、熱平衡になろうと運動が起こる可能性があるからです。このことはなにかの拍子で書くかもしれません。
と前提を変える必要があります。
熱平衡とは理想気体の場合、全体のエントロピーが増大しきって1モル当たりのエントロピーが何処でもどこの高さでもエントロピーが同になります。
そうした時は必ず
-PdV=nCvdT (1‐4)
(1-4)がなりたっていなければなりません。
また、物理的中身は同じすが
VdP=nCpdT (1-4)´
(1-4)´も要請されます。
理想気体において(1‐4)と(1-4)´が同じ中身であることは
PV=nRTを微分して
VdP=nRdT-PdV
(1-4)から
VdP=nRdT+nCvdT
さらにマイヤーの関係式(Cp-Cv=R)から
VdP=nCpdT
と(1-4)´なり(1‐4)と同じです。
理想気体では(1-4)、(1-4)´は同じ内容でエントロピーが変わらない特殊なエネルギー保存則なのです。
このように「熱平衡」=「エントロピーが変わらないこと」が要請され
V(Z)dP(Z)=nCpdT(Z) (1-4)´
から(1-3)は
nCpdT(Z)+nmgdZ=0
となり、nが消えて
CpdT(Z)+mgdZ=0
dT(Z)/dZ+mg/Cp=0 (1-5)
となって乾燥断熱減率がようやく理解されます。
無理に、-PdV=nCvdT や VdP=nCpdT を解釈する必要はなさそうです。
「-PdV=nCvdT」または「VdP=nCpdT」
が成り立っていなければエントロピーは変化してしまいます。
熱平衡ではなかったことになるからです。
(1-5)を積分すると
CpT(Z)+mgZ=Const
のエンタルピー(CpT(Z))と位置エネルギー(mgZ)のエネルギー保存則が成り立ちます。
このエネルギー保存則を利用して温位θが
Cpθ(Z)=CpT(Z)+mgZ (1-6)
で定義されます。
普通の温位の定義に至る過程は「3理想気体とエントロピー表現」でみることにします。
普通の温位はZの代わりにPを使って、もう一つの変わらない量であるエントロピー表現での定義になります。
エントロピーを用いながら、第2法則を無視するのですから気象とは不思議なものです。
2温位の傾き
計算ばかりではつまらないでしょうから実際のデータも少しみましょう。
次のグラフは南鳥島09時観測データから計算した温位と飽和相当温位の平均です。
分かりにくいかもしれませんがグラフは2秒間隔で年が変わっています。
15000m以上では温位の傾きは一定です。
ご覧のように南鳥島では南極のように月毎に傾きが変わることもありませんでした。
温位を直線近似しても問題はないとおもいます。
これは、平均値ではありますが20000mの温位が分かれば25000mの温位が分かると言うことです。
しかし、温位の傾きが一定とはどのような事でしょう。
現実の空気は
θ(Z)=aZ+b
dθ(Z)/dZ=a
となっていると言うことです。(1-6)を微分すれば
dθ(Z)/dZ=dT/dZ+mg/Cp
これが、何かわかりません*が学者は必ず説明しなければならないし、また、モデルで表現できなければそのモデルは現実に似ていないことになりそうです。
温暖化モデルで温位がこのような傾きをしていなかったら結論は疑わしいことになりそうです。
もっとも、モデルはエネルギー保存則を無視して温位を定義していますからこのような表現をすることはないと思います。・・表現したら逆に変です。「温位の定義」参照
結果、観測事実を表現できませんので温暖化モデルにまともなものはないと言うことです。
このように気象モデルは観測事実を拠り所に作られておらず、まだまだ場当たり的なのです。
*空気が理想気体なら温位の傾きは0です。金星の大気の温度減率は綺麗に乾燥断熱減率になっていますので温位の傾きは0です。一方、地球は温位の傾きがコンスタントになっています。空気は理想気体ではないが、エントロピーはどこの高さでも同じになろうとしているのかもしれません。・・・面白そうななぞですね。
ついでですので
ご覧のように毎年対流圏では等飽和相当温位になっています。
月平均の分布はこんな分布はしていませんので、緩慢に対流圏は等相当温位に向かう性質があるのかもしれません。
15000m以下は数本の直線で近似するのは無理のようです
しかし、4月の歪みがちょっと大きすぎると思いますが、地上付近は寒気移流の影響を受けているような印象をうけます。
本来は7月のように3本の直線で近似できるものではないかと思います。
申し訳ありませんが飽和相当温位の解説は省略させて頂きます。
3理想気体とエントロピー表現
「1乾燥断熱減率 静水圧平衡 熱平衡理想気体」の面倒な計算で繰り返し部分が多いですが気象で第2法則を使うなら必要なトレーングだとおもって下さい。
また、マイヤーの法則が何か?を考えないのもよくないと思います。
これまで説明してきませんでしたから「こいつもよくわかっていない」と想像された方は正しいです。
理想気体が
nCvT=-PdV
を満たすとエントロピーはかわりません。
また、理想気体は
PV=nRT
ですから。
P(T、V)=nRT/Vの2変数です。
そして nCvT=-PdVから
1変数になります。
組み合わせはPとT、TとV、VとPがあります。
まず、おじみ?のP、Tの組み合わせを計算します。
状態方程式を微分して
VdP+PdV=nRdT
VはV=nRT/Pで、PdVは右辺へ移動させ
(nRT/P)dP=nRdT―PdV
これとエントロピーが変わらないエネルギー保存則
nCvdT=-PdV
とCp-Cv=R(マイヤーの関係式)から
dP/P=(Cp/R)dT/T
lnP -(Cp/R)lnT
=Const1
PはTだけの関数ですよねP(T)でエントロピー=Constが変わらないよと言う式がでてきました。
エントロピ-は変わらないと仮定して具体的にエントロピーConst1をもとめたのです。
初期値をP0,T0,V0とすれば
Const1= lnP0 -(Cp/R)lnT0
気象では
ここからP0=1000hPa、T0=θとしてエントロピー表現の温位の定義式がでてくるのはご承知のとおりです。
エネルギー表現の
Cpθ=CpT+mgZ
はPの代わりにZを使っただけです。
もうひとつのエントロピーが変わらないエネルギー保存則の式を考えましょう。
本当はnCpdT=VdPからnCvdT=-PdVを導けば終わりですが・・;
nCpdT=VdP
から温位の定義式の元
lnP -(Cp/R)lnT
=Const1
を求めてみます。
nCpdT=VdP
に
R/Cpを両辺にかけて
nRdT =(R/Cp)VdP
とます、状態方程式を微分すると
PdV+VdP=nRdT
ですから
PdV+VdP =(R/Cp)VdP
両辺をPVで割って
dV/V+dP/P=(R/Cp)dP/P
dV/V+(1-(R/Cp))dP/P=0
Cp-Cv=R マイヤーの関係式から
dV/V+(Cv/Cp)dP/P=0
(Cv /Cp)lnP +lnV
=Const2´´
V=nRT/Pですから
(Cv /Cp)lnP +lnnR+lnT―lnP
=Const2
((Cv/Cp)-1)lnP +lnT =Const2- lnnR=Const3
Cp-Cv=R マイヤーの関係式から
―(R/Cp)lnP+lnT=Const3
lnP-(Cp/R)lnT=-(Cp/R)Const3=Const1
と温位の定義式になりました。
ところでP、V、Tの初期値をP0、V0、T0とし
lnP -(Cp/R)lnT
= lnP0 -(Cp/R)lnT0 =Const1
となります。
これがエントロピーです。
Const1は初期値P0、V0、T0で計算しています。
Const2とConst1の関係は
-(Const2-lnnR)(Cp/R)=Const1
となります。
Const2がわかれば必ずConst1が決まります。また、Const2もP0,V0,T0の初期値で表せます。
ちょっと(すごく?)分かりにくいのですが、Const1がエントロピーならConst2も基準が違うだけでエントロピーだと言えます。
そうしたエントロピーの式が3つあります。
A: lnP -(Cp/R)lnT =lnP0 -(Cp/R)lnT0=Const1
B: lnP +(Cp/Cv)lnV =lnP0 +(Cp/Cv)lnV0
=Const2
C:(Cp/Cv)lnV+(Cp/R)lnT
=(Cp/Cv)lnV0+(Cp/R)lnT0=Const3
エントロピーが変わらなければ、3つの変わらない量があり、そのうち1つがわかれば他の2つを計算できます。
統計力学からの要請があるかもしれませんが、
lnP -(Cp/R)lnT
=lnP0 -(Cp/R)lnT0=Const1
をエントロピーとしたのは便宜上のためと解釈してもよいと思います。
付録1 マイヤーの法則(正しいかどうかわかりません教科書で確かめてください)
nモル個の粒子で構成される理想気体を定圧でt0からt℃まで上げるエネルギーはnCp(t―t0)必要なのですが、内部エネルギーはnCv(t―t0)しか増えません。
何にエネルギーをつかったかと言うと体積を大きくするのにつかったのです。
体積が⊿Vだけふえたとすると上がったとするとPは一定ですので余計なエネルギー⊿Eは
⊿E=(⊿V)P=nR(t-t0)
余計なエネルギーは
⊿E=(nCp-nCv)(t―t0)
ですので
Cp-Cv=R
みんな定数ですから、定圧膨張でなくとも成り立つわけです。多分・・:
言い過ぎかもしれませんが、混合気体の空気を1モルではなく、1g当たりの方程式に書き直すとマイヤーの関係式は見えてきません。
窒素と酸素の1g当たりCpやCvの値が違うからです。面倒でつまらない計算をすれば見えるとは思いますが・・
マイヤーの関係式がもやもやする方は実験事実と思ってください。
付録2
nCvdT=-PdV (1)
nCpdT=VdP (2)
でエントロピーが変わらないなら(2)から(1)を引いて
nCpdT-nCpdT=nRdT=PdV+VdP
nRdT=PdV+VdP (3)
(1)(2)はエネルギー保存則ですから(3)もエネルギー保存則のはずです。
(3)はエントロピーがかわらないのか?
(3)はPV=nRTを微分したものですから(3)を積分すれば
PV=nRT+Const
となります。
多分
PV=nRT
でエントロピーが変わらないか考えればよいとおもます。
もともと、理想気体を前提にしています。そえに加えエントロピーが変わらないとしたのですから変わってしまうでしょう。
初期値をP0、V0、T0とし体積をV0を2倍にしてT0を変えないとします。
Pは1/2になり
P0V0=nRT0 → (P0/2)(2V0)=nRT0
で
PV=nRT
は満たします。
初期値をP0、V0、T0とし体積をV0を2倍にしてT0を変えないとするのは、(断熱)自由部長です。
自由膨張は不可逆糧でエントロピ-は増大しまます。
「3理想気体とエントロピー表現」で出てきた3つのABCのエントロピーの式にP0、V0、T0を代入した結果と P0/2、2V0、T0を代入した結果を比べれば大きくなっているはずです。
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まだ、準備不足かも知れませんが次回かその次に南鳥島の高層データを用い
乾燥空気エネルギーをエンタルピーCpT
位置エネルギーρgh
温位×Cp=CpT+mgh
のエネルギー密度を求め比べてみます。
乾燥空気のエネルギー密度はCpTをVで割ります
状態方程式PV=nRTでsから1/V=P/nRTで
エネルギー密度はCpT/Vで
CpT/V=(Cp/R)P
となりますからエンタルピーのエネルギー密度として(Cv/R)Pを用います。
実際に観測されたPの平均値を使います。
温位の傾きをみると十差の空気は理想気体にみなせませんが、気象モデルはパラメータを入れますが理想気体とみなして天気予報をあてます。
どんな所が理想気体らしいのか?ないのか?考察することがでてくるかもしれません。
結果はどうも、エネルギー密度からは実在空気は理想気体と見なせそうとなりそうです。
ここまで読んで下さった方に感謝します。