2010年12月13日月曜日

温位エマグラムと湿球温度 ―雨雪判別―

気象の話とは関係ありませんが
ニーサ(NISA)入門 ニーサ(NISA)な話
http://kumotorinotama.blogspot.jp/ を始めました。100万の運用益に税金がかからないと言うお話です。
実際にリーマンショック前に投資をしていたら?具体的に考えました。


昔(?今も?)雨雪判別は、相対湿度と気温を要素に統計的な処理によってなされていました。
当然予想精度は悪く、5センチ程度の積雪で交通機関がストップする地方では大問題でした。
雨雪判別は湿球温度を用いるのが自然で、予報精度も上がります。
何故、相対湿度で統計処理をしたのか疑問です。

1.湿球温度
まず、具体的にどのようなものかイメージしてもらいます。
これは、各地の気象台が正しく蒸気圧を計っているのかを確かめる温度計です。
こうしたシンプルな温度計のほうが正確に計れるようです。
一方の温度計に濡れた布をまきファンを回して空気を取り込みます。
濡れた温度計を湿球温度計と呼びます。
濡れた布は周辺の空気より蒸気圧が高く蒸発します。
蒸発すると温度が下がり、蒸気圧が下がります。
やがて定常状態(常に新鮮な空気と入れ替えていますから平衡状態ではありませんが近似的に平衡状態になっているかもしれません)となりす。
湿球温度計は周辺の空気とエネルギーのやり取りをし、定常状態では湿球温度計近傍と環境の空気が持つ1モル当たりのエネルギーは同じになるだろうと思われます。

上空から降る雨粒や雪粒は常に新しい空気にさらされますので、湿球温度計の感部と同じであることがわかります。

気象大学校では比較観測を教えていないのかもしれません。教えていればこうした考えは自然に頭に浮かぶはずです。

教えられても、熱力学を教わる前で「重要なことではないと軽く扱われ」忘れてしまうのかもしれませんが…(もし、そうなら悲しい出来事です。…)
 
2.温位エマグラムと湿球温度
雪雨判別の前に、温位エマグラムと湿球温度の利用方について紹介します。
温位と乾燥断熱減率 それと 温位エマグラム」の「6温位エマグラム」で参考にと温位エマグラムを紹介しましたが、一番左のグラフが湿球温度です。




館 野     2006年07月21日21時 観測

上のグラフは2006年7月21日21時に舘野で観測されたデータから作成したものです。
700~1500m程度(着色部分)まで16℃と湿球温度が一定になっています。
1000~1500mは相当温位≒飽和相当温位ですから相対湿度はほぼ100%となります。
雲のある相と考えてよいでしょう。
湿度100%では「湿球温度」=「露点温度」=「気温」ですから1000~1500mはほぼ等温度だと読み取れます。
16℃の雨が等温度にしていると判断できます。
雲は1500mの下層雲です。
上空に暖かい空気(高相当温位)が乗り上げる温暖前線的な構造により作られていることが分かります。
地上付近は16℃の小雨が降り降水により冷やされますから、温暖前線的な構造が続きます。
思ったより長時間雨が続き、気温が上がらない結果となります。

3.大雪(?)の事例

さて、2008年02月03日、関東地方は大雪となりました。

次のグラフは前日21時舘野で観測された資料から作成したものです。
温位等はCpT+mgZ=Constとし、地表の高さを0mとして計算したものです。
(普通に使われる温位等を使わなかった理由は「4.相当温位の問題点」を参照して下さい。)


館 野     2008年02月02日21時 観測

湿球温度は地上付近から500m程度までだいたい0℃となっていました。
(降水形態が雪になる地上での目安は、湿球温度プラス0.8℃だったと思います。おそらく表面張力の影響を無視した結果だと思います。)

1200から1500mに湿度100%の相(恐らく下層雲が広がっていた)がありますが、地上付近は乾燥しておりまだ降水は始まっていないと考えられます。
この層(湿度100%でマイナス3~4℃)から雪が降ってきても地上付近までの湿球温度は0℃以下ですから雪は解けて雨になることはありません。

整理したグラフが見当たらなかったのでワイオミング大学からの速報値で当日の様子を従来方式で確かめると(改めて私は「なまけもの」なのがわかります)

館 野     2008年2月03日09時 観測


上空には湿った暖気(7000mまでほぼ湿度100%)が入って、降水を地上にもたらしていると思います。
降水の温度は0℃以下なのでしばらく雪は止まないし雨にも変わらないと判断できます。

4.相当温位の問題点
 テーマからはずれますが、大切な事項なので2点ほど説明させて下さい。

1)温位がもつ誤差
温位と乾燥断熱減率 それと 温位エマグラム」の「2.温位」で高さZの空気の温位は

θ1=T(z)(1000/P(Z))(R/Cp)    (4-1)
θ2=T(z)+(mg/Cp)(z-z1000)  (4-2)
と2種類の計算方法があることを説明しました。

ここに、z1000は1000hPa面の地上から高さです。

θ1とθ2はともに高さZの空気を、その位置エネルギーを使って1000hPaまで準静的に断熱圧縮した値です。

これは、大気が静水圧平衡に達した時の議論であることに注意してください。

実際の空気は上空に行くほど温位が高くなっています。

(4-2)を使うとわかりますが、500や850hPaの気圧面毎にz1000が異なってしまいます。

 実際は上空の空気ほど、z1000は地下にもぐりこむことになります。
 こうした誤差は、当然、相当温位にも残ってしまいます。

 明らかに、地表面の高さを0メートルとして議論するべきです。

 従来方式の(4-1)では300hPaのような上空でこの誤差が大きくなります。


 はじめから誤差を含みますので予想は当たらないことになります。
 これは、「上空の大気の流れの予想が悪い」ことになりますから、長期予報の精度が悪いことを意味します。
 結果、長期予想は統計的な手法に頼ることになります。
 



小雨の中キノコの行進です。(LUMIX DMC-FX35で撮りました、)冬の写真が撮りたいが・・・寒いのも・・


4.湿球温度と相当温位
「2.温位エマグラムと湿球温度」で湿度100%では「湿球温度」=「露点温度」=「気温」と、常識を頼りに書きました。
上の図は湿球温度計の感部付近のイメージ図です。
湿球温度計は絶えず新鮮な空気に入れ替えていますから平衡状態にはなりません。

しかし、環境の空気と感部近傍の空気の持つ「1モル当たりのエネルギー」=「比エネルギー」が同じとなる定常状態になります。
相当温位の式(4-3)の両変にCpをかけると

Cp×θe+mgz1000=CpT(Z)+mgZ+(E(Z)/P(Z))×L   (4-4)

で右辺は気圧P(Z)のエンタルピーと位置エネルギーと潜熱です。
環境の空気が持つ比エネルギーと見なせます。
これが湿球温度計近傍の空気の持つ比エネルギーが同じとなります。

E(Z)は高さZの蒸気圧ですが、湿球温度計の高さは同じですので少し見方をかえます。
EはE(Td)と露点温度の関数とみましょう。
Zを残したいならTd(Z)とすればよいのです。
結果、2つの比エネルギーは

CpT+mgZ+(E(Td)/P)×L=CpTw+mgZ+(E(Tw)/P)×L (4-5)

となります。

湿球温度は飽和相当温位とは逆に、相当温位を変えずに湿度100%を仮定したときの温度(=露点温度)となります。

図で整理すると

となります。

気象関係者は温位、相当温位、飽和相当温位、湿球温度の関係をエネルギーという観点から整理しておくことをお勧めします。

2010年12月8日水曜日

乾燥断熱減率と温位エマグラム


「温位は乾燥空気を1000hPaに準静的に断熱圧縮(膨張)したときの温度」ですが、気象を勉強していて定義式の奇妙さに困惑されるかたは多いと思います。
また、基礎と言われているのにもかかわらず利用もできない。
私も「準静的に断熱圧縮するエネルギーはどうするのか?」と疑問をもったのですが、参考書を開いてもなかなかスッキリしませんでした。

答えは準静的に断熱圧縮するエネルギーは位置エネルギーを使うようです。

1.静水圧平衡再び
やはり、静水圧平衡が必要ですので繰り返します。定義式までたどりつきたいのでほとんど数学になります。
釣り合いの式は
A×P(z+Δz)+MgA×P(z)  (11
整理すると
V(z)×dP(z)+nmg×dz=0   (12
となりました。

2.温位 
理想気体の状態方程式 P(z)×V(z)=nRT(z)から
V(z)=nRT(z)/P(z)これを(12)に代入整理すると
dP(z)/P(z)+(mg×dz)/(R×T(z))=0  (21
((21)のT(z)の代わりに平均温度T´を用いて積分すると測高公式になりますが…常識的にT´などもちいるべきではありません。)

乾燥断熱減率は
T/dz=-(mg/Cp)  (22
でした。(21)と(22)から普通の温位の定義式を求めてみます。(22)は Cp×dT(z)=-(mg)×dz (微分と言っても割り算です。)ですから、(21)は

dP(z)/P(z)-(Cp/R)×(dT(z)/T(z))=0

となり積分すると
(f(x)=1/x を積分すると ∫f(x)dx=ln(x)+C ですね)

ln(P(z))-(Cp/R)ln(T(z))=Const1 (23

P(z)が1000hPaの時の温度をθ1とおけば、(23)は任意の高さzで成り立ち、1000hPaの高さでも成り立ちますから、静水圧平衡している大気は

ln(P(z))-(Cp/R)ln(T(z))=ln(1000)-(CpR)ln(θ1)=Const1   (24
となります。計算を続けます。

Cp/R)ln(θ1T(z))=ln(1000P(z)) 

θ1T(z)(1000PZ))RCp)        25
と普通の温位の定義式になります。

一方、乾燥断熱減率(22)を直接積分すると
Cp×T(z)+mgz=Const2       (26
です。
ここでもPZ)が1000Paの時の温度をθ2、高さをz1000とおけば
Cp×T(z)+mgz=Cp×θ2 + mgz1000
Cp×θ2Cp×T(z)+mg(z-z1000

θ2T(z)+(mg/Cp)(z-z1000)    (27

(25)のθ1と(27)のθ2は2つとも(22)から求めた同じものです。

  θ1θ2 なのです。
両式とも何かの保存量がもとになっているのが分かると思います。
(27)はエネルギーだと直感的にわかります。詳細は省略(? 乾燥断熱を参照?)しますが(25)はエントロピーが変わらないようにした結果です。

何故、奇妙な(25)を使うのか?よくわかりませんが、コンピューターで気象モデルを走らせるのに、zの代わりに気圧Pを使うのでこれに合わせるためかもしれません。
私の感想は、「気象予報士になろうと勉強している人にとっては迷惑な話だな」です。

3.相当温位
Cp×T(z)+mgz=Const2 (26)はエネルギー保存則を現しているのが直感的にわかると思います。
1モル当たりのエンタルピーと呼ばれるエネルギーと位置エネルギーの合計が一定だと解釈されます。
現実の空気は水蒸気が含まれ、水蒸気が水になるとき潜熱を出します。
26)はいわば乾燥空気のエネルギー保存則です。
水蒸気を含んだ空気は水蒸気の潜熱を考慮しなければなりません。
潜熱を求めるには水蒸気の量が必要ですが、水蒸気の量は分圧の法則から求めることができます。
大気圧をP、水蒸気圧をeとすると1モルの空気にある水蒸気量は
eP モル
と計算されます。
水蒸気を絞り取った乾燥空気は
(P-e)/P モル
となります。
水蒸気の量は少なく、平均分子量はほとんど変わらないとして、水蒸気の潜熱を含めた新しいエネルギー保存則は
{(P(z)-e(z))/P(z)}×Cp×T(z)+mgz+(e(z)/P(z))×LConst3 (31
となります。
(式がみえにくくなりました。次の(32)ではP(z)→Pe(z)→eとします。)
これを、温位にならってエネルギーを保存させ、かつ、エントロピーを変えないように1000hPaまで圧縮します。
今回は、位置エネルギーだけでなく、水蒸気の潜熱もつかって圧縮します。
水蒸気は全部使いはたしたとすると温度θeはエネルギー保存則から

{(P-e)/P}×Cp×T(z)+mgz+(eP)×L={(P-e)/P}×Cp×θe+mgz1000   (32
となりますから
θeT(z)
  +{P/(Pe)}×(mgCp)×(z-z1000)
  +{e/(Pe)}×(L/Cp)   

P(z)≫ e(z)とすると 
θeT(z)+(mgCp)×(z-z1000) +(eP(z)×(L/Cp)(33

33)の両変にCpをかければ、それぞれの項が何のエネルギーであるのか確認できます。Wikipedia相当温位の定義式を確認して比べてみてください。
気象は温位や相当温位を、わざわざ複雑にして定義しています。
Wikipediaにみられる相当温位の定義式と(33)は同じ内容なのです。

4.温位と相当温位
実際の大気は静水圧平衡をしていませんので、変化が続くかどうかあるいは激しくなるか調べる必要があります。
θ=T(z)+(mg/Cp)(z-z1000)    (18
θeT(z)+(mgCp)×(z-z1000) +eP(z)×(L/Cp)(32
を使えば簡単に2つ空気塊を比べることができ、変化の予想ができることがあります。

温位を例にしますと
例えば、925hPaの温位が300kで850hPaの温位が295kだとします。
これは、925850hPaの空気を風船に詰め込んで、位置エネルギーを使って1000hPaまで準静的に断熱圧縮した結果とも解釈できます。

5kの温度差があり925Paの空気のほうが暖かくなります。
18)から、2つの風船を850hPaの高さまで持ち上げてもその温度差はかわらないのがわかると思います。(上図参照)
ブルーの風船の空気のほうが回りの850hPaの空気の質量密度より小さく、ブルーの風船は浮くので上昇流が起こるとされています。
相当温位でも同じような議論ができます。

5.飽和相当温位
「湿度100%以上でないと雲粒はできないか?」で液体と気体の水が混在していると温度が10℃なら水蒸気圧は12hPaと自動的に温度も決まってしまうことを紹介しました。
これは、気温が10℃なら水蒸気は12hPa以上にはなれないことを意味します。
また、気温10℃で水蒸気圧が12hPaなら相対湿度100%です。
相対湿度100%と仮定した相当温位を飽和相当温位とよびます。
飽和相当温位と相当温位を比べると大気が安定なのか不安定なのか分かります。

相対湿度100%の状態を念頭に、気温、露点温度、水蒸気圧にどのような関係があるか確認しておきます。
a)相対湿度100%では気温と露点温度は同じ値になる。
b)露点温度が高いと水蒸気圧が高い
c)同一の気圧の中で水蒸気圧が高いと水蒸気量が多い

同一の気圧で相対湿度100%を条件に気温と相当温位の関係を考えます。
「気温が高い」→「露点温度も高い」→「水蒸気量が多い」
となります。
「気温が高く」&「水蒸気量が多い」→「相当温位が高い」
ですから、結果
「気温が高い」→「相当温位が高い」
となります。
逆に、
「相当温位が高い」→「気温が高い」
となります。
同一気圧で相対湿度100%を条件にすると相当温位が高ければ気温は高いと言えます。

この結果を頭に入れて頂いて、
850hPaの相当温位を300k、500hPaの飽和相当温位を290kだとしましょう。
850hPaの空気塊を風船に詰めてエンタルピーと呼ばれるエネルギーを使って風船の中のエントロピーを変えないように持ち上げます。

CpTはエンタルピーと呼ばれるエネルギーです。
エンタルピーを使うと温度が下がります。
使い道は位置エネルギーの増加です。これでエネルギー保存則を満たします。
温度が下がると途中から相対湿度が100%になります。
100%に達したら、エンタルピーCpTに加えて水蒸気の潜熱も使って、やはりエントロピーを変えないように持ち上げます。
こうした作業はエネルギー保存則をみたし、相当温位の値はかわりません。
やがて風船は500Paに達しますが相当温位は300kのままで湿度は100%です。
周りの500hPaの空気を湿度100%と仮定した相当温位(飽和相当温位)は290kです。

結果、850hPaから持ち上げた風船の中の温度は周りの500hPaの気温より高いことになり、周りの空気より質量密度が小さくなります。
850hPaの相当温位が500hPaの飽和相当温位より高いと大気は不安定だと言えます。

気象関係者SSI飽和相当温位-相当温位関係をしっかり認識しておくべきです。 

… 
分かりにくい説明で申し訳ありません。説明ではなく、単なる私自身の復習になったようです。…
相当温位と飽和相当温位の関係は「習うよりも慣れろ」と、ごまかして教えてこなかったことがたたりました。…


歩いていて心地よい登りでした


6.温位エマグラム
剣二さんのページに温位エマグラムの概念図がありますからチェックしてみて下さい。

私のメモが見つかりましたので参考にして下さい。
どのような現象が起きたのかは、申し訳ありませんが全く記憶がありません。
担当地域外の事例なので、顕著現象が対象だとは思いますが…






2010年12月5日日曜日

湿度100%以上でないと雲粒はできないか?

If you need English.Please look for the next page.

Radiative Cooling and ORB

http://takanosunonobo.blogspot.jp/2013/02/radiative-cooling-and-orb.html


 


気象学では、湿度100%以下の大気中に雲粒がある現実を認めつつ、湿度100%以上(過飽和)でないと雲粒はできないとしています。

この考えに従うと、雲粒が存在しても過飽和でないと雲粒は蒸発してなくなってしまいます。

経験的に過飽和な状態などほとんど見つけられません。

現実とは違います、なにか変です。

また、科学の常識では「水は0℃以下で個体、液体、気体の状態で存在できる」はずですが、気象の常識と違います。

宇宙空間に液体の水をまけば、氷となって漂うことも確かめられています。(「宇宙からの帰還」 立花 隆 中公文庫)
宇宙に放りだされた瞬間、一部が蒸発して潜熱が奪われ瞬間的に氷ると考えられます。
この考え方は間違っているのでしょうか?

液体と気体の水が無重力のなかで(自由落下中の雨)共存できるか考えてみました。

かなり奇妙な結論になりましたので、「うわさ」程度の話として読み流してください。

1.液体と気体の水が共存する条件とは?その弱い重力下
1)平衡状態1
真空中に熱源と熱力学でおなじみのピストン付きの容器を考えます。
容器の中には液体と気体の水が入っています。
ピストンの上にはおもりとアリさんが1匹載っています。
ピストンの断面積Sで重りとアリさんの質量の合計をMとすると、圧力はPMgSとなります。

液体と気体の水の温度を10℃としましょう。
このとき水蒸気の圧力はP=12Paとなります。
逆に水蒸気圧P=12Paは温度10℃に対応します。
温度が20℃なら水蒸気圧は23Paです。こうした温度を露点温度と呼びます。
熱力学によると、液体と気体の2相の場合、双方の圧力と温度は同じになるそうです。

よそからエネルギーの流入もなく、Pとピストンの中の圧力が釣り合っていると何もおこりません。こうした平衡状態になっているとします。


2)平衡状態2
10℃の熱源を取り付けアリさんにピストンから降りてもらいます。
水蒸気や水の圧力や温度に実質的に変化はありませんが、圧力はわずかにバランスが崩れ液体の水は蒸発を始めます。

蒸発するためにはエネルギーが必要ですが10℃の熱源が供給します。

最終的にピストンの中身は全部水蒸気になります。

全部水蒸気になったら、またアリさんにピストンに載ってもらい、熱源を外します。
中の水蒸気はエネルギーの流入はなくなって、もとの圧力にもどり釣り合います。
あとはなんの変化も起きませんので平衡状態になっています。

3)平衡状態3
再び10℃の熱源を取り付け、今度はアリさん2匹にピストンに載ってもらいます。
今度は圧力Pが少し大きくなり、水蒸気の液化が始まります。
液化の際の潜熱は熱源に放出されます。
最終的に水蒸気は全部液体の水になります。

ピストンにのるアリさんを1匹にして熱源をはずします。
圧力は釣り合い何も起こらなくなります。
これも平衡状態です。

1)水と水蒸気がある場合、2)水蒸気だけの場合、3)水だけの場合

3つの平衡状態を見てきました。3つとも温度と圧力は同じです。
なにが違うのか?
熱源とエネルギーをやり取りしていますのでエネルギーが違います。

つまり、10℃のH2Oがどのような割合で液体であるか気体であるかは内部エネルギーによって決まるわけです。

水の総量が1モルなら内部エネルギーの最大値(全部水蒸気になっている)はCvTとなります。

2.液体と気体の水が共存する条件とは?その2  無重力下 
その1では弱い重力を仮定しました。


アリさんは登場できませんが、平衡状態1の実験装置を宇宙空間に放り出したら液体の部分の水はおそらくボールのような球になると思います。
エネルギーは加えておらず、変化が起こりましたのでエントロピーは増加すると思います。)

無重力に放りだされた状態


さて、この容器の中の液体の水は蒸発するでしょうか?
蒸発するにはエネルギーが必要ですが、エネルギーの供給はありません。

私は気象学に次のよう教えられました。
「雨粒は表面張力の影響で蒸発してしまう。」
続く説明では雨粒はほとんど濃硫酸のようになってしまいます。
これを気象の理由としましょう。
気象には液体を気体にするエネルギーを無制限に与えてしまう欠点があります。
気象は雲粒の出来ないのは、次のように言っているのと同じです。
「液体から気体に変わるエネルギーを与えます。そして、全部気体になりました。」
これが、雲粒ができない理由です。
私は次のように批判します。
気象の理由は熱的平衡状態を前提にしていません

それならば、無重力の水滴は一体どうなっていればよいのでしょう。
残念ながら、私にはそれを確かめる能力がありません。

しかし、私たちは熱的平衡状態にある大気でも温度の違いがあるのを知っています。
乾燥断熱減率は熱的平衡状態から計算されます。
熱的平衡状態でも温度が違ってしまうことがあります。
さて、水蒸気圧を12hPa、温度を10℃としましょう。

私は水粒の温度は10℃より低いと予想します。。
そして、水の球の近傍と水の球から遠くの水蒸気の比エントロピーは同じだ。
おそらく、水の球の周辺には温度と圧力の小さな傾斜が出来るのでしょう。

液体に少しエネルギーを加えて計算すればわかるかも知れませんが、表面張力のエネルギーも考えなければなりません。


そして、地球上ではさらに複雑になります。
水蒸気と空気の混合気体を考えなければなりません。
私は次のように予想します。
湿球温度計近傍の水蒸気と環境の空気の比エントロピーが同じになる。
私は湿球温度がその値に近いと思います。
しかし、それはただのイメージです。

3.放射冷却とORB
話が、私に手に負えないほど難しくなってしまいました。
ここでは、ORBについて私の意見を紹介します。
次の写真を見てください。



山小屋で撮ったオーブです。どうも霧の中や霧のがでそうなときに降るようです。椿鬼奴さんのレポートで名前を知りました。
部屋の中でも降るようですが残念ながら山小屋の中では降っていませんでした。フラッシュをたかないと見えにくいです。
ことらを見るシカたちがわかりますか?
ORBが写っています。
写真は1500to2000mの標高の高い所や水辺で、フラッシュ撮影したものです。
直接ORBを見ることはできません。
私はORBを水だと考えています。

そして、私はORBが水なら、その温度は湿球温度だろうとかんがえました。


筑波山気象・水文観測プロジェクトは次の要素などを観測しています。
データは次のアドレスで手に入ります。.
気温、気圧、相対湿度、風向、風速、日照等
そして、表面の温度、地下1センチの温度。

地上1.5メートルの湿球温度を計算することができますので、次のような条件でデータを選び出し、湿球温度を計算しました。
条件は0時から6時に観測され風速0.3m/sec以下のデータです。

横軸が湿球温度、縦軸が地表温です。
赤プロットは次の条件を満たしています。
-1℃<地表の温度-湿球温度<1℃。

データの数は次です。
全データ数は866です。
赤丸の数は51559.5%)。
地表の温度が湿球温度より1℃以上高かったのは18621.5%)。
地表の温度が湿球温度より1℃以上低かったのは16519.0%

全データの相関係数は0.98
湿球温度をX 地表温をYとします。
回帰式は次のとおりでした。
Y0.9X0.61

私は次のように結論します。
晴れて、相対湿度が下がっていれば湿球温度は低くなります。
冷たいORBが温度を低くするのだと思います。
2法則が言うように、放射冷却はありません。
.



1
無重力下では、液体と気体の内部エネルギーに加え、表面張力のエネルギーを考えるべきです。
重力下では蒸発や凝結がおきても
「境界の面積が変わらない」=「表面張力のエネルギーはかわらない」
無重力では
「境界の面積は変わる」=「表面張力のエネルギーも変わる」
となります。
熱力学の得意な方は案外簡単に平衡条件を見つけるかもしれません。
見つけましたら、ご教授願います。勝手ですが私の学力はできの悪い大学1年生程度あることを念頭に噛み砕いて願います。よろしくお願いします。
 takanosunotama@mail.goo.ne.jp




帰り道少し霧が晴れてきました。