2011年7月2日土曜日

原子力発電所の水素爆発について メモ33

ベント再考 開かなかった?MO弁

どうも、いつまでもベントについてもやもやしたものが残っています。
東電が丁寧にベントを説明するべきなのですが・・・
イメージを作るのにずいぶん時間がかかり、今もしっくりしません。

用語集 福島第一原子力発電所関連
http://www.anaroguma.org/komake/fukushima/dic/index.htm

がありました。
・・・出所があまりはっきりしないのですが他の解説と比べてみても確からしいと思いました。
そこでのウェットベントの解説をみると、
「原子炉圧力容器および原子炉格納容器内にある放射性物質を含んだ蒸気を外部へ放出する際、サプレッションプールの水の中をくぐらせてから外部へ放出させること」
とあり

1 原子炉圧力容器の場合は、
「主蒸気管~逃し安全弁~サプレッションプール内の水中」
という経路

2 原子炉格納容器の場合は
「ベント管~ベントヘッダ~ダウンカマー~サプレッションプール内の水中」
へと蒸気を「吹き込む」ようにしてサプレッションチェンバーに排出する。
ベントヘッダー、ダウンカマーはベント管とサプレッションプール(圧力調整室)をつなぐ配管くらいの解釈でよさそうです。


とありました。

1はメモ28で説明した「逃し安全弁」操作とそっくりです。
2は格納容器の放射能を含んだ蒸気を抜く作業のようです。
まだ、どのように外に排出するのか明確ではありませんが
どうやら、建屋内に排出する原子炉もあるらしい・・・ちいさい原子炉かもしれません?・・また
1で、圧力容器に消防ポンプで水が入りやすくなるのか?疑問は残ります?・・・一応・・
格納容器の圧力は水蒸気圧が主だと思われますから、水蒸気圧は飽和水蒸気圧力とみなせ、飽和蒸気圧が下がれば温度も下がるとも考えられます。
それで圧力容器の温度=圧力がさがる?

ベントと騒がれたベントは2のウェットベントのようです。
以前は1、2号の操作電源は生きていたと考えていましたが、電磁弁でMO弁を開けたのではなく手動ハンドルでMO弁を開けたようです。(後述)

これからは操作電源は無かったとして考えます。
(1号機非常用復水器にはポンプがあり、これは動いていたので何らかの電源はあったと思いますが)

1号機のベントを解説したネットニュースがありました。

毎日jp
福島第1原発:1号機のベント「失敗」
http://mainichi.jp/select/today/news/20110624k0000m040144000c.html

記事をみるとサプレッションプール(圧力調整室)からAO弁、MO弁をとおり排気筒へと出ていくのが分かります。
図は記事から拝借いたしました。
ルール違反かもしれませんが・・。
 

ベントで出る放射性排気は
格納容器~ベント管~ベントヘッダ~ダウンカマー~サプレッションプール~AO弁~MO弁~排気筒

と流れるようです。


圧力容器の三重水素や酸素等、格納容器に漏れるのかは私には正確にはわかりませんが、逃し安全弁(メモ28参照)操作やドライベントしないと格納容器には漏れないと思います。

漏れたら格納容器の圧力が熱だけでなく、三重水素や酸素等でも上がることになり圧力容器が壊れたことになり格納容器が壊れることになります。
原子炉縦屋からの排気を出す所から水素が逆流してきたなどと変な話がありますが・・・
放射能はないし、水素はほとんど全部、排気筒から大気中に捨てられます。
いくらか原子炉建屋に入ってもヒンデンブル号のように燃えることさえないと思います。
ネット動画でよくみる水素爆発は、純粋酸素と水素で爆発させていますが・・・・大気中の70%は窒素です。納得できるものは少ないと思います。

1号機のベントは失敗したようですが、記事から午後3時ごろに東電は「午後2時半にベント成功と判断」と発表。経済産業省原子力安全・保安院も追認した。
としてます。

ベント失敗とは一度開いたAO弁が なぜか? 閉まってしまったということです。

AO弁は一度開き、放射性物質がこの時排気筒から大気中に放出し
東電は
15時29分頃、敷地境界の放射線量の値が制限値を越えたため、原子力災害対策措置法第15条第1項の規程に基づく特定事象(敷地境界放射線量異常上昇)が発生したと判断
としました。

放射能データを記録したプレス
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/110528d.pdf
をみると
15時29分 MPー4付近1015.1μSv/h
が最高値で、この日にこの値を越すことはありません。

爆発は記事からは3月12日15時36分です。
ベントで排気筒から上空に捨てられた放射性物質により
敷地境界放射線量異常上昇が発生しましたが、
水素爆発による放射能の上昇はなかったことになります。

1号の爆発映像(省略)をみれば、圧力容器から漏れた水素が爆発の原因なら1015.1μSv/hという数字ではすまないと思います。
建屋内にベントしたのと同じだからです。

さて

アナログとデジタルの狭間で
http://d.hatena.ne.jp/tei_wa1421/20110614#20110614fn2
と言うブログに

「ベント弁の設計がおかしい件」

がありました。
そのなかで

YosiokaMemo47.pdf
http://www.shippai.org/images/html/news559/YoshiokaMemo47.pdf
を紹介しています。

YosiokaMemo47.pdfさんは
ベントについてわかりやすく解説してくれています。
下図(引用 で図2としている図です)はYosiokaMemo47.pdfから拝借しました。

少し長くなりますが、引用します。

*****************
YosiokaMemo47.pdf
引用開始
②ベントはどういう条件で可能なのか?
図2を見ていただくと、排気塔の手前に「ラプチャー・ディスク(破裂板)」というものが
あります。ラプチャー・ディスクは、予め決められた設定圧力で薄い金属板が破断するこ
とにより、瞬時かつ確実に内部圧力を逃がすことが出来る安全装置です。機械的な動作も
電気も必要としませんが、一度開放したら元には戻せないので、別に閉鎖弁を設ける必要
があります。図2のラプチャー・ディスクに「0.55Mpa(5.5 気圧)で作動する」とありま
す。つまり、格納容器圧力が5.5 気圧でないと作動しない、という仕組みです。
ベントには、もう一つ条件があります。それは、ベントは原発の外に放射能災害を引き起
こすので、ラプチャーディスクの万一の誤作動を考え、常時閉の隔離弁を設置するよう定
められているため、この弁を開けなければならない、ということです。
しかも、この弁が、片方は AO 弁(空気圧作動弁)で電気は不要ですが、もう一方はMO
弁(電動弁)なので、全館停電している環境では、仮に格納容器圧力が5.5 気圧以上でも、
ベントするためには、このMO 弁を現場で開けなければならない、という状況だった訳です。
引用終わり
*********


Pabsと見かけない単位を使ってますが
株式会社テストー|圧力について
www.testo.jp/faq/pressure.html  に
「Pabs, 絶対圧, 宇宙空間のような真空(ゼロ圧)を基準とした圧力を絶対圧といいます。」
とあります。素直に0.528MPaと解釈してよさそうです。

普段はラプチャー・ディスク(破裂板)が誤動作で壊れないように、安全対策としてAO弁、MO弁2つ弁を設けて閉じているようです。
また1,2号機はすべての電源(交流・バッテリー)を失ったのは本当のようです。(後述)

YosiokaMemoさんは
「(1号機は)全館停電している環境では、仮に格納容器圧力が5.5 気圧以上でも、
ベントするためには、このMO 弁を現場で開けなければならない、という状況だった訳です。」
と考えられた

この点について「アナログとデジタルの狭間で」さんは疑問を持っておられる
http://d.hatena.ne.jp/tei_wa1421/

アナログとデジタルの狭間でさんのブログを少し引用します。

*********
アナログとデジタルの狭間でベント弁の設計がおかしい件
引用開始
そして、なんらかの信号が入らない限り通常時閉止であり、かつ電源が落ちたときつまり今回の事態のようなシビアアクシデント時は炉を守るために弁開となるような設計がなされているべきである
引用終わり
**********

アナログとデジタルの狭間でさんはMO弁が開いていないのは「おかしい」と考えられました。
私も同意見です。

人間がハンドルでMO弁を開けるようにするなんて設計が間違えだということです。

そのように設計されていれば設計の間違えです。

常識的には電源が切れるとMO弁は開く仕組みにするべきなのです。

ルポ東京電力 原発危機1カ月(奥山 俊宏著 朝日新書 )P48


「ベントに電気が必要か?」の問いに
東京電力は「いらないはずなんですが、ちょっと確認させてください」とあります。

細かいことは分からないのにこのように答えられることがらで
常識的にこのように設計するはずなのです。
電磁弁はすでに開いていたと思います。
電磁弁が正常に動作しなかった?とも考えられますがこの可能性は非常に小さいと思います。


ところで2号機のベント作業を振り返ると
6月19日の朝日新聞に3月13日08時10分格納容器ベント弁25%開とありました。
メモ28 2号機ベントについて 参照)
この格納容器ベント弁25%は開はMO弁のことであると思われます。
さきほどの毎日JPの福島第1原発:1号機のベント「失敗」を読みますと
「非常用のハンドルを手動で回しMO弁を25%程度開けることに成功。」
とありました。

偶然1、2号機とも25%です。

1、2号機とも電源を失った時に電磁弁が正常に動作しなかった?
ありえないことです。

YosiokaMemoの図から1号機はラプチャー・ディスク(破裂板)が破裂すると5.5気圧以上の排気が
排気筒へ流れ込みますが
その間には
高価なプラチナかバナジウムを使った排ガス結合器

何台も並ぶホールドアップ塔
があります。

私は東電の訳の分からなさは「カルト集団」だからと考えています。
私は東電が弁を25%まで「開けた」のではなく25%まで「閉めた」のだと思います。

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YosiokaMemoさん
アナログとデジタルの狭間でさん
すごい方がたですね。
こうした人たちはまだ他にもいらっしゃるのでしょうね。・・・

リンク集にYosiokaMemoのリンク集を加えました。

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