2011年6月8日水曜日

原子力発電所の水素爆発について メモ20

ネットニュース

東京新聞 TOKYO Webに 「原発事故報告書要旨」・・・・・・・・(共同)
【事故の発生と進展】
があります。
コンパクトにまとめられていますが、少し誤解しそうなところがあります。
事故の発生と進展を整理するのにちょうどよいので引用します。

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東京新聞 TOKYO Web

原発事故報告書要旨


引用開始

【事故の発生と進展】
運転中の同原発1~3号機は地震で自動停止。津波で冷却系が機能を失った。1~3号機で原子炉圧力容器への注 水ができない事態が続き、核燃料は水面から露出。炉心溶融に至り、一部は圧力容器下部にたまり、一部は圧力容器に開いた穴から外側の格納容器に落下して堆積する「メルトスルー(溶融貫通)」が起きている可能性も。燃料被覆管が過熱し大量の水素が発生。燃料から圧力容器、原子炉格納容器へ放射性物質を放出。
格納容器圧力が上昇して破損するのを防ぐため蒸気を大気中に逃がすベントを実施。1、3号機で水素爆発が発生して原子炉建屋を破壊。大量の放射性物質を放出した。4号機でも水素が原因とみられる爆発。2号機圧力抑制プール付近でも爆発音。水素爆発の可能性。

引用終わり

誤解を生みそうな所は
1 津波で冷却機能を失った
2 格納容器圧力が上昇して破損するのを防ぐため蒸気を大気中に逃がすベントを実施。1、3号機で水素爆発が発生して原子炉建屋を破壊。大量の放射性物質を放出した。
の2点です。

1 津波で冷却機能失ったのは全電源を失って(?東電本社とのTV会議はできたようですが?)冷却機能を失いました。しかし、すべての冷却機能を失ったわけではありません。
「非常用復水器」(1号機)、「原子炉隔離時冷却系」(2、3号機)が働き冷却はできていました。
本来「非常用復水器」、「原子炉隔離時冷却系」は外部電源がなくとも動くはずのものです。
1号機の「非常用復水器」が壊れたいきさつはメモ4で推測できます。

参考


やがて、「非常用復水器」、「原子炉隔離時冷却系」が壊れてまたは停止して、完全に冷却機能を失いメルトダウン、メルトスルーにつながりました。
「非常用復水器」、「原子炉隔離時冷却系」が壊れたり停止した理由ははっきりとはわかっていません。


2 水素爆発で大量の放射性物質を放出したイメージですが、
「格納容器圧力が上昇して破損するのを防ぐため蒸気を大気中に逃がすベントを実施。大量の放射性物質を放出した。また、1、3号機で水素爆発が発生して原子炉建屋を破壊。」
だと私は思います。

水素爆発が起きて大量の放射性物質がでた事実はありません。

爆発したものが「水素」なら「放射能を含まない水素」が爆発していることになります。
(感情的になりましたが)メモ19で指摘したように、3号機の爆発後放射能の値が高くなった事実はありません。

参考
福島第一原子力発電所3号機付近での白煙発生について


さて、私は水素爆発が水素・酸素注入設備にからんだものだと思っています。

水素・酸素注入設備がどんなものなのか等を原子力安全・保安院による文書
 
東京電力㈱柏崎刈羽原子力発電所1号機の出力降下の原因と対策に係る東京電力㈱からの報告及び検討結果について
 
で考えてみたいと思います。
 
まず タイトルですが・・

文書のタイトルでは「水素・酸素注入設備」に関係する事故であることがわかりません。
事故は圧力容器に関係する事故ですから重大事故です。

「原子力発電所でどのような事故が起きて何が問題なのか?」
を調査する意思のないことの表れです。

タービン冷却の水素ガス漏れ事故を
玄海原子力発電所4号機 発電機冷却用水素ガス補給量増加について
としたのは典型例です。(これでは事故であることもわからない)

結果(こうした事実を知りながら

原子力発電所における火災の発生防止対策の充実に関する報告書
で水素ガス漏れ事故には全く触れない「でたらめな対策」ができあがります。

わき道にそれました。

下の図は水素・酸素注入設備の事故説明で使われた図に少し加筆したものです。


文書には

※1 水素・酸素注入設備: 
原子炉圧力容器内構造物の応力腐食割れの予防保全対策のため、原子炉給水中に水素を
注入している。
また、復水器に移行する余分な水素を安全に処理するため、復水器の排気の配管にこの水素注入量
に見合うだけの酸素を注入して、化学反応により水にしている。 
 
※2 バックアップ酸素ボンベ: 
原子炉給水系に注入した水素は、一定の時間遅れをもって復水器の排気配管に到達する。
このため、水素・酸素注入設備が不具合により停止した場合、バックアップ酸素ボンベから自動的
に復水器の排気配管へ酸素を注入し、水素過剰状態(可燃範囲の状態)を回避する。

とありました。

この文書の

1.原因と対策に係る東京電力㈱の報告書の要点

水素・酸素注入設備に不具合が発生し、バックアップ酸素ボンベから自動的に復水器
の排気配管に注入された酸素量が多量であったため、復水器の真空度低下に至ったものと推定
された。」
 
とあります。

バックアップ酸素ボンベの酸素はタービンのある復水器に入り込んだのですから、復水器の
高放射能水と混ざり、水素が送り込まれている圧力容器に入ったと思います。
圧力容器で水素と酸素が結合し(燃え)ても、危険なのかどうか私にはわかりません。
(かなり高圧な酸素が入ったかもしれませんが…)
しかし、原子炉給水ポンプや、計測機器などは壊れて重大な事故につながる可能性は高い
と思います。
 
純粋酸素は非常に危険なガスです。
wikipedia の説明とは少し矛盾しますがアポロ計画かその前は、宇宙船の質量をギリギリまで
削って窒素まで取り除きました。酸素だけで宇宙船内の圧力を0.3気圧にしたと思います。
そうした結果、あらゆるものが燃える火災が発生しました。
純粋酸素を使った医療行為(?)(今もあるのかなあ?)でも火災が多発したのを憶えています。

圧力容器につながる「計器事故」は報告義務がないようです(?未確認)がとんでもないことだと思います。

本来なら原子力の運転を止めて点検整備すべき「事故」だと思います。計器から高放射能水が
出てくればそれは圧力容器のパイプ破断事故と同じだからです。

*この装置の酸素は純粋酸素でないと意味がないと思います。
 
また

「バックアップ酸素ボンベから注入される酸素の流量等が適切に調整されていなかったことが
確認された。」

これはひどい
点検・整備後などで設置されて「バックアップ酸素ボンベ」が正常に動作するかテストを
していなかったことになります。(適当に設置しただけと言われてもしかたがないし、事実です。)
圧力容器に直接つながる、いわば原子力発電所の心臓部でこんな手抜きは許されません。
 
「技術者の良心」以前の問題で、この原子力発電所には「技術者」がいません。
 
こんな事故は、放送業界なら「放送免許停止」です。原子力発電所長の首は飛ぶべきだと思います。
 
さらに

「(3)再発防止対策
・・・
 東京電力㈱の原子力発電所において、酸素流量調節弁(小弁)と同型弁の点検においては、
分解点検後の組み立て時における注意事項を施工要領書に明記する。
 水素・酸素注入設備が設置されている東京電力㈱の原子力発電所において 、水素・酸素注入
設備のバックアップ酸素の必要供給量(流量及び供給時間)を再評価し、適切な流量調整を
実施する。      
 
 はどうも、分解点検を業者委託しているような書きぶりです。原子力発電所の心臓部の
メカニズムですから、本来「東京電力の技術者が行うべきです」。外部電源が喪失した場合、
ここでトラブルが生じたら現場の職員では対処できなくなるからです。
 
 これは・・・どのように解釈すべきなのか迷います。
・・・・
私には、
「バックアップ酸素の必要供給量(流量及び供給時間)をドンブリ勘定で取り付けたど、
事故が起きちゃった、やっぱりまずかったよね、ちょっと流量調整を変えてみらあ。」
と読めます。
 
これに対し原子力安全・保安院は
 
2.当院の評価と今後の対応                         
 当院として、東京電力㈱から提出された原因と対策に係る報告書について検討した結果、
復水器の真空度が低下した原因の推定及びこれらに対する再発防止対策は妥当であると考える。
 
何のお咎めもありません。事故の再発防止なんて何もありません。
問題は、バックアップ酸素をドンブリ勘定で設置したことで、そうした「どうしようもない体質」を
何とかしろと指導するのが事故再発防止です。

それ以前に

「お前ら、原子炉を運転する資格がないから、全部、冷温停止させろ」

と言うべきでしょう。
 
圧力容器に関係する事故は放送業界で言えば、放送免許停止クラスの事故だと思います。
さらに、この事故の原因はバックアップ酸素ボンベの調整ミスと言うより、

点検後のバックアップ酸素ボンベの試験を怠った事故です。

所長の首は飛んでいなければならないと思います。
 
このミスは本来「技術屋さん」が犯すミスではありません。

いったい「原子力安全・保安院」って何なのでしょう?

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