6.原発法15条通報から1号機原子炉建屋爆発まで-その1-
の続きです。
中間報告は
機能しないフェイルセーフ機能を前提に間違った推論しています。
また、時系列が読みにくくなっており、必要な原子炉水位のデータも欠けていますので、
1号機の非常用復水器の状態を中心に時系列を簡単に整理しておきます。
11日
① 14時52分 圧力容器の圧力が高まる異常事態で、非常用復水器ICが自動起動。
② 15時03分 再発電に備えて圧力を6~7MPaに保つために非常用復水器ICを止める。
③ 15時16分 原子炉水位計(広帯域)+910mm (有効燃料頂部TAF+4340mm)
④ 15時26分 A、Bの2系の内A系だけの非常用復水器ICを動かす。
⑤ 15時30分頃 2回 津波が到達。
⑥ 15時42分 15条通報 全交流電源を喪失。
⑦ 16時36分 15条通報 非常用炉心冷却装置注水不能(1,2号機)。
⑧ 16時45分 原子炉水位計(広帯域)-910mm(1号 15条解除)。
⑨ 16時56分 原子炉水位計(広帯域)-1500mmを最後に水位計は見えなくなる。
⑩ 時間不明 原子炉建屋入口の放射線量が高く非常用復水器タンクの水量未確認。
⑪ 17時12分 15条通報 非常用冷却装置注水不能で 1号再通報。
⑫ 18時18分 直流電源が戻り、弁が閉じているのを確認して制御盤で弁を開ける。
⑬ 18時26分 制御盤で弁を閉じる。
⑭ 21時30分 制御盤で弁を開ける。
12日
⑮ 01時48分 冷却水補給の消化系ポンプの不具合を確認。
③は福島第一原子力発電所
東北地方太平洋沖地震に伴う原子炉施設への影響について P14
⑫の 弁を閉じたのは、停電と暗闇のなか原子炉建屋越しに反対側ある、非常用復水器IC排気口の蒸気が確認して非常用復水器の冷却水がないと判断して閉じたとしています。(冗談みたいな判断です。)
⑭は「東北地方太平洋沖地震発生当時の福島第一原子力発電所運転記録及び事故記録の分析と影響評価について(概要)」
資料は
です。
P107
④ 3 月11 日21 時30 分頃、制御盤上MO-3Aが閉状態を表すランプが消えかかっているのに気付き、電源が喪失すれば、同弁を開操作できなくなることを懸念した。
当直は、同日18 時18 分頃以降に復水器タンクからの蒸気の発生量が少なかったのは、復水器タンク内の冷却水が少なくなったからではなく、やはりフェイルセーフ機能により原子炉格納容器内側にある二つの隔離弁(MO-1A・4A)が開いていないからである可能性が高いと考えた。
MO-1A・4Aは交流モーターで弁を開閉しますので、交流電源が失われた状態で閉まることはありません。当直はフェイルセーフ機能など考えません。
Usoだと思います。
直流電源が戻ったのは18時18分で、
21時30分に弁を閉じています。
3時間以上直流電源が戻ったことになります。ABの2系ある非常用復水器のB系は開けられませんでした。
当直は、戻り配管隔離弁(MO-3A)を閉じたままであれば、仮に原子炉格納容器内側の隔離弁(MO-1A・4A)が僅かでも開いていたと判明した場合に、弁駆動用電源が喪失して戻り配管隔離弁(MO-3A)を開けることができなくなってしまうと考えた。
さらに、当直は、少なくともIC を数時間作動させ続けて冷却水の補給が必要になったとしても、D/DFP が作動している以上、FP 系ラインから復水器タンクへの補給に必要な弁操作をして補給すればよいと考えた。
消火系FPラインで、非常用復水器に水を給水するためには、原子炉建屋の弁を操作しなければなりません。原子炉建屋には入れないとした前の説明と矛盾します。P103には
同日17 時19 分頃以降、原子炉建屋R/B4階のIC の復水器タンク内の水量を確認しに行くこととした。
同日17 時50 分頃、1号機R/B 二重扉付近で線量計(GM管)が振り切れたため、確認作業を諦め、1/2 号中央制御室に引き返した。
とあります。R/Bは原子炉建屋のことです。
当直は、IC が作動する可能性がゼロではないと考え、IC の戻り配管隔離弁(MO-3A)の開操作を実施した。このとき、当直は、蒸気が放出されるような音を聞いたが間もなく放出音が聞こえなくなり、やはりIC が正常に機能しているとは考えなかった33。
別棟の原子炉建屋4階の非常用復水器の音が聞こえたのですから、
中央制御室ではきっと海の波の音が聞こえるほどの静けさだったことになります。
これもUsoで
蒸気の音を聞いたのなら、原子炉建屋で聞いたと考えるべきです。
P108
c IC の作動状態に対する発電所対策本部及び本店対策本部の判断
11日16 時45 分頃、発電所対策本部は、1 号機の原子炉水位計が見えるようになったとの報告を受けた。
同日17 時7 分頃までに
発電所対策本部は
11日16 時42 分頃に広帯域で-90cmを示し、同日16 時56 分頃に-150cm を示したのを最後にダウンスケールして再度計測不能となった旨の報告を受け
本店対策本部との間でも同情報を共有していた。
同日17 時15 分頃、発電所対策本部技術班においてTAF 到達予測時間を計算し、1 時間後にTAF 到達と予測した。
しかし、この時点でも、発電所対策本部及び本店対策本部の中に、かかる現象や評価とICの機能を結び付けて考え、IC が正常に作動していないのではないかと指摘する者はいなかった。
このころ、どのような状況だったかと言うと
15時16分 原子炉水位計(広帯域)+910mm (有効燃料頂部TAF+4340mm)
16時45分 原子炉水位計(広帯域)-910mm
16時56分 原子炉水位計(広帯域)-1500mmを最後に水位計は見えなくなる
17時07分 15条通報 非常用冷却装置注水不能で 1号再通報
非常用復水器が正常に作動していないと判断するしかない状態です。
対策本部は現実に起こっていることが信じられなかった。Or 信じなかった。
だから念のため17時12分に一旦解除した非常用冷却装置注水不能と言う15条通報の再通報だけをして、なにもできなかったのです。ボンクラ技術者の集団だったと思います。
非常用復水器の動作に関係なく、データからどうにかして圧力容器を冷やすしかなかったのです。
P109
3 月11 日18 時18 分頃、発電所対策本部(及び本店対策本部)は、IC(A 系)のMO-2A、MO-3Aを開操作したことの報告を受け、IC が作動していると認識した。
3 月11 日18 時25 分頃にMO-3Aを閉操作した事実について、十分な意思疎通が図れずその後も発電所対策本部では、IC が作動中であると認識していた。
繰り返しになりますが、ここで簡単に2号機の状態を説明します。
地震後、まだ発電機の電源があるとき、
高圧炉心冷却系や低圧冷却系を使わず(想像)、
わざわざ、原子炉隔離時冷却系RCICを動かして(事実)、
再発電に備えて圧力容器の圧力を保ちました。
原子炉隔離時冷却系RCICは発電を止めた圧力容器を十分に冷やせません。
結果
① 十分に冷えない圧力容器は、圧力が高まります。
②高まった圧力はある圧力まで高まると自動的に逃がし安全弁SRが開き、圧力容器の圧力を格納容器に逃がします。
③その反動で、圧力容器の水が過剰に供給され、「圧力容器水位高」の異常事態を引き起こします。こうして原子炉隔離時冷却系RCICは自動定止します。
④止まった原子炉隔離時冷却系RCICは直流電源で再起動します。
今回、2号機では直流電源が無くなりました。
原子炉隔離時冷却系RCICが止まってしまうのは確実な状態だったのです。
こうしたあからさまな状態を発電対策本部と東電本店は分かっていたと思います。
発電所対策本部は、同日21 時台までは、2 号機のRCICの作動状態が確認できず、原子炉水位も計測できなかったため、炉心が露出し、炉心溶融に至ると危機感を持つなど、1 号機についてはIC による冷却機能が果たされているとの判断を前提に、必要な措置を検討していた。
1 号機について、D/DFP による復水器タンクへの水補給は実施されておらず、消防車を用いた代替注水作業や原子炉減圧に向けた準備が開始された形跡は全く見当たらない。
P110
3 月11 日21 時30 分頃、発電所対策本部は、IC のMO-3Aを開操作したことの報告を受けた。
発電所対策本部及び本店対策本部は、吉田所長を含め、それまでIC のMO-3Aが閉状態であったことを意味することに問題意識を持つことなく、なおもIC が正常に作動中であると認識
当直は正確に状況を説明しなかったとのしっぽ切り・・・そんな気がします。
P111
e 問題点の指摘(IC の作動状態に関する判断及びこれを踏まえた対応上の問題点)
(a)当直の判断
① 3 月11 日15 時37 分頃以降、-省略-
この頃、当直は、IC が作動しているか否かについて明確な判断ができない状態が続いていたが、
11日16 時42 分頃以降、原子炉水位が低下しているのを確認した。さらに、再びダウンスケールして原子炉水位が不明となった
R/B 内にIC の復水器タンクの水量を確認しに行こうとしたが、
17 時50 分頃、
1号機R/B 二重扉付近に差し掛かったところ放射線量が高く断念した。
3 月11 日17 時30 分頃 当直は、原子炉水位が低下傾向にあったことから、IC が十分機能していない可能性を視野に入れ、代替注水手段を確立するために、D/DFP を起動して待機状態にした。
原子炉建屋には入れないのでタービン建屋T/Bのディーゼル駆動消火ポンプの事になりますが・・
P89の
津波到達後の当直の行動を見ると、1 号機R/B 内に立ち入り、ディーゼル駆動消火ポンプ(D/DFP)の起動確認や消火系(FP 系)ライン構成のための弁操作その他の必要な作業に従事している事実が認められる。
と矛盾します・・
P112
また、この頃になってようやく、当直は、IC 排気口から放出される蒸気の状態によってIC の作動状態を確認することにも思い至ったが、1 号機R/B越しに確認するだけで、それがIC 排気口から放出される蒸気であったか否か判然としないのに、直接目視しようとしなかった。
いずれにしても、このとき、当直は、IC 排気口から放出される蒸気が少量であると判断し、IC の復水器タンク内の冷却水が少なくなっている可能性も考慮して、配管破断防止のため、同日18 時25 分頃、戻り配管隔離弁(MO-3A)を全閉とした。
夜間であること、停電で照明がないこと、排気口ファンは回らないこと、排気口が見える位置ではないこと当直は蒸気など確認していなかったと思います。
作り話だと思います。
同日18 時30分頃から、FP 系ラインから原子炉に注水可能となるように、弁の手動操作を開始した。
やはり、原子炉建屋で弁の手動操作をしたのでしょう。しかもかなり遅れて・・・
放射線が高く、非常用復水器の冷却水を確認しなかったのはUsoだと思います。
もともと、こうした確認作業など頭の中になかったのだと思います。
③ しかし、D/DFP の吐出圧力と原子炉圧力の関係上、SR 弁開操作による原子炉減圧なしにD/DFP を用いて原子炉注水を実施することは物理的に不可能であり、当直は、そのことを十分認識していた。
そして、当時、1/2 号中央制御室では、電源喪失により、SR 弁を遠隔操作できなかったのであるから、当直は、発電所対策本部に対し、IC の作動状態に関する問題点を明確に指摘し、代替注水手段を講じる上でSR 弁の開操作に必要なバッテリーを調達するとともに、制御盤裏の端子へのバッテリー接続をするように支援要請をしなければならなかった。
P82下に逃がし安全弁の解説があります。
2 号機については、原子炉圧力容器内の蒸気を圧力抑制室内に吹き出す仕組みになっているSR 弁が8本あり、これらのSR 弁によって多少の前後はあるものの、原子炉圧力7.5MPa gage 前後で逃し弁機能が、7.7MPa gage 前後で安全弁機能が、それぞれ作動する仕組みになっている。
参考資料
1号機でも同様で、逃がし安全弁はバネ等を調節することにより自動的に基準圧力で開きます。また、遠隔操作によっても開くことができます。報告はやはり事故隠しです。(かなり悪質です。)
自動的に逃がし安全弁が開くから、2.3号機の原子炉隔離時冷却系RCICが止まったのです。
1号機は逃がし安全弁SRが固着(良くある事故)して開かなかったから、原子炉圧力が高くなる異常が起こり、非常用復水器ICが自動起動したのです。
発電所対策本部は、IC が正常に作動しているとの誤った認識から、前記のような支援が必要であるとは認識しておらず、また、同日夕方から同日夜にかけての頃、SR 弁による減圧操作のために必要な合計120V 分のバッテリーが発電所構内で収集された形跡も全く認められない。
発電所対策本部は逃がし安全弁が自動的に開き圧力容器は減圧すると考えていたと思います。
非常用復水器ICが圧力が高まる異常で自動起動理由など頭の中になかったのだと思います。
(b)戻り配管隔離弁(MO-3A)の閉操作に関する報告
-省略-
内容は発電所対策本部及び本店対策本部に、ICが動いていたと認識していた。と実際の作業員の認識と違っていたとのことです。
(c)発電所対策本部及び本店対策本部の判断
非常時に冷却機能を果たすIC が、電源喪失した場合、フェイルセーフ機能が作動して配管上の四つの隔離弁が閉となる機構になっていることは、ICという重要な設備機器の構造・機能に関する基本的知識である。
当委員会によるヒアリングの際、「電源が失われて必要な操作ができなくなると、原子炉格納容器の隔離機能が働いて隔離弁が閉じるのか、又は開いたままなのか。」と尋ねると、皆一様に、「隔離弁は閉じると思う。」と述べた。
つまり、1号機やIC の特殊性以前に、「閉じ込める」機能の基本的知識を持ち合わせていれば、破断検出回路やフェイルセーフ機能の詳細を知らなかったとしても、電源喪失時にIC の隔離弁が閉じている可能性があることを容易に認識し得たと考えられる。
「電源がなくとも圧力容器を冷やす非常用復水器」が
電源が無くなって止まってしまうなどと考える技術者はいないと思います。
悪質な口裏合わせだと思います。
「閉じ込める」機能の基本的知識があれば、
電源喪失時にIC の隔離弁が開いていると考えるはずです。
「電源がなくとも動くはずの非常用復水器IC」が
電源が失われて弁が閉じて止まるなら、
設計ミスです。
事故の責任は東電・国だけではなくメーカーにもあることになります。
-省略ー
このあとしばらく、危ない状況なにの発電所対策本部と本店は何もしなかったと 解説しています。
P117
同日21 時19 分頃、発電所対策本部及び本店対策本部は、1 号機の水位がTAF+200mm を示したとの報告を受け、TAF プラス領域にあったことをもって、なおもIC が機能していると誤解していた。
・・なるほど、このために今まで有効燃料頂部(TAF)の数字をださなかったようです。
再確認しておきます。
15時16分 原子炉水位計(広帯域)+910mm(有効燃料頂部TAF+4340mm)
16時45分 原子炉水位計(広帯域)-910mm
16時56分 原子炉水位計(広帯域)-1500mmを最後に水位計は見えなくなる
となったと認識し、
17時12分 15条通報 非常用冷却装置注水不能 を通報しています。
+200mmなら
有効燃料頂部TAFは4000mm以上下がったことになります。
「TAF プラス領域にあったことをもって、なおもIC が機能していると誤解していた。」
このような誤解などあり得ません。
単になにをして良いのか具体策が全く思い浮かばなかったのだと思います。
ディーゼル駆動消火ポンプ(D/DFP)は
使うべきで
待機させておくような
状況ではありませんでした。
ディーゼル駆動消火ポンプ(D/DFP)を使うなどとの考えはこの時点ではなかったのだと思います。