2011年12月28日水曜日

ステファン・ボルツマンの法則と放射冷却


気象の話とは関係ありませんが
ニーサ(NISA)入門 ニーサ(NISA)な話
http://kumotorinotama.blogspot.jp/ を始めました。100万の運用益に税金がかからないと言うお話です。
実際にリーマンショック前に投資をしていたら?具体的に考えました。


こんな難しい話を私が解説できるのか?とてもできないと思います。
冷や汗がでます。
しかし、この法則を根拠に放射冷却とか温室効果が市民権を得ているのも事実です。
ステファン・ボルツマンの法則はおそらく熱力学第2法則から導かれたのにその第2法則に反する放射冷却や温室効果の根拠にされています。
気象学者のいいかげんさが招いた結果です。

ステファンボルツマンの法則は

「物質が放射している分、空間から放射を受けている。」

のが前提となっています。

恥をかくのは慣れていますので放射について考えたいと思います。



の説明では
空洞内のエネルギー密度は、全振動数について積分することにより求められ
単位体積当たりのエネルギーは

としています。
物質の表面が放射していると考えている方は違和感を覚えるのではないでしょうか?





これをエネルギー密度と放射強度の関係式

  に代入し、

とおくと、
I = σT4
を得る。


となっています。
Wikipediaの説明では物質はでてこないのです。確かめてみてくだい。

この説明では空洞中のエネルギー密度を計算していますので、空洞が放射していることになります。




それを、私たちは「物質が放射をしている。」と暗記しています。
どうして空洞の放射が、物質が放射していることになるのか?
確かに、物質は放射していることになるみたいなのですが、私たちはこのあたりの知識と言うか理解が足りないようです。

私にこうしたことを説明できるとは思いませんので、
朝永先生の権威を借りて
イメージを作ってみたいと思います。

朝永振一郎先生の量子力学1を覗きます。


量子力学1 著者 朝永 振一郎 :みすず書房


朝永先生は日本人としては2人目にノーベル賞を取ったかたです。
最近は知らない人が増えているようですが・・・。 ・;
若い人ならしかたないが・・・ 
「物理学とはなんだろうか」は必読書だと思います。岩波新書とみすず書房から出版されています。先生最後の著書だと思います。

ここで関係するのは1章です。

1章の目次は
第1章       エネルギー量子の発見
 1 事のおこり 
 2 比熱の理論
   (省略)
 3 「真空」の比熱
 4 Rayleigh-Jeansの公式
 5 Wienの「ずれ」法則
  (省略)
  (iii Stefan-Boltzmannの法則
  (省略)
 6 Wienの公式
 7 Planckの公式
 8 エネルギー量子
 9 比熱の量子論
となっています。

さて、
1 事のおこり
P2に次の記述があります。

空洞輻射の問題とは一口に言えばこうである.ある温度に熱せられた物体はどういう色の光を出すであろうか.温度があがるにつれて次第に白い色を呈するようになる.(省略)温度Tの壁で囲まれた室(空洞)があったとする.そうすると,熱的なつり合いの状態において,この空洞中にはどんなスペクトルの光が存在するであろうか.

下線は私が引きました。
先生の言葉を解釈するのは怖いのですが、熱的なつり合い状態とは熱平衡状態のことだと思います。
箱とその空間を考えて箱と空間が熱平衡にあると仮定して論を進めていると思います。
何もない空間と箱が熱平衡状態になるとはどういうことでしょうか?

先生は理想気体などの物質の比熱を説明されたのち 3 「真空」の比熱 で次のように解説しています。

P11
この空洞の中は文字どおりからっぽであって物質は何もはいっていないけれども,この中には光が満ちていることになるので,やはり,不規則複雑な電気振動のエネルギーとして,この空洞は熱エネルギーをもつことができ,従って比熱というものが考えられる.

下線は私が引きました
私のイメージなど不正確でしょうが・・・
理想気体が不規則複雑な運動していて、その運動エネルギーの平均値が温度になることはご存じと思います。
そして、その理想気体を1度上げるのに必要なエネルギーが比熱となります。
確かに空洞でも光が存在すれば光のエネルギーは当然考えられる。
空洞の中の光のエネルギーを観測して求めることは可能です。

すこしややっこしですが、朝永先生の説明によると、壁を1度温度を上げるエネルギーとは別枠で空洞の温度を1度あげるのにエネルギーが必要になると思います。
ちょっとびっくりするかもしれませんが壁の質量を変えず空洞を大きくすれば、空洞が大きくなった分のエネルギーが必要になると言うことです。






量子力学1に戻ります。
先生は論をすすめ、空洞の比熱は古典論をそのまま適用すると空洞の比熱は無限大になってしまうことを説明されます。もちろん実際に空洞の比熱は有限です。
空洞の中の温度は理想気体のように粒子の平均運動エネルギーだと言うふうにはいかないようです。

P12
しかし、もちろん実際の空洞のエネルギーは有限である.実験によれば空洞のエネルギーと温度との間にStefan(シュテファン)の法則
U=σT^4
が成立している.定数σはStefanの測定によって,空洞の体積が1cm^3である場合に,σ=7.64×10^-23エルグ/(cm^3・度^4)であることが分かっている


シュテファンさんはプランクの法則から導出される式
を実験で求めたわけです。

先生はつづけて
P12
これからみて,電気信号の各自由度に分配されているエネルギーは,等分配の法則に従っていなくて,それよりもはるかに少ないことがわかる.この事実があればこそ,前の説でガス(tama注 理想気体のこと)や固体の比熱を計算するのに、その分子間に存在する電気振動を無視しても一応実験と合う結果が得られたのである.このことは,前節の比熱測定の実験における程度の温度では、電気振動にはほとんどエネルギーが分配されていないことを示す.

下線は私がひきました。

さて私の解釈です。
比熱測定の実験における程度の温度で、
電気振動にはほとんどエネルギーが分配されないのは、
空洞の熱容量=比熱が物質と比べものすごく小さいためなのだ。
と解釈しました。

壁と空洞はそれぞれの熱容量をもっています。


そして壁(=物質)が放射していると解釈ができるのは
壁と空洞は「熱的なつり合い」=「熱平衡状態」にあることが前提条件なのです。
空洞がT^4に比例する電気振動(電磁波)を放射するなら壁も放射していなければ熱的なつり合い状態にならないと解釈されます。
これが「物質が放射する」との根拠になっているのだと思います。

空間もその温度の4乗に比例する電磁波を放射していると考えるしかないと思います。
ところで
放射冷却という気象用語がありますが、

晴れて風のない夜でもステファン・ボルツマンの法則に従えば、
地表が赤外線を放射してもすぐ上の空間からほとんど同じ量と周波数分布の赤外線が飛び込んでくることになります。
また、もともと空気成分の運動エネルギーは空間の電気振動エネルギーに比べ桁違いに大きく、空間が「多少冷えた」=「少し熱平衡状態からずれた」からと言って空気の温度が下がることは事実上ありえません。

 
放射冷却は間違えです。
百の議論より1つの観測事実です。



をご覧ください、筑波山の地表温度は湿球温度に落ち着くのです。
湿度100%なら湿球温度は気温と同じになりますが、100%以下なら気温より低くなります。


湿球温度については
温位エマグラムと湿球温度 -雨雪判別- をご覧ください。


上の写真はオーブと呼ばれるものです。水辺や1500程度の山中で夜に写真を取るとよく写ります。
肉眼では見えません。
私はこれを雲粒だと思っています。

大気中にオーブのように目に見えない雲粒があれば、その温度は湿球温度になります。
筑波山の地表は午前中、日照で暖められますが、日照あっても午後は目に見えない雲粒(オーブ)が落ちてきて冷やされ始め、日照が弱くなる夕方には湿球温度に落ち着きます。



空気が乾燥していれば湿球温度がかなり低くなります。
雲粒の温度はかなり低いということで、次の朝、目に見えない雲粒が地表面に溜り地表の温度が低くなると考えられます。
そして、雲粒は地表面だけでなく空気も冷やすことになると考えられます。
放射で地表面の温度が下がっても、その地表面は空気を冷やせません。
なぜなら、空気は断熱材でもあるわけです。
もし、地表が熱伝導で1.5mの上の空気を0℃にしたなら熱伝導度の高い地中は地下1.5m以上0℃になってしまいます。
放射冷却は物理的にはメチャメチャな概念なのです。



付録
計算の嫌いな方は結論だけ目を通して下さい。
ステファンの法則から、1㎥の空間の温度を1℃上げるのに必要なエネルギーを計算します。
 
20℃から21℃まで上げるエネルギーは次のようになります。

U21)-U20)=σ(273.221×10-σ(273.220×10
σ(7491532597.24967390194419.7376)×106
=σ(101338177.512)×106=σ×1014
7.6×10^-9erg
=7.6 ×10^-16J

1モルのCO2が1気圧、0℃の中にあるとするとその体積は大体次のようになります。
 22.4 × 10 ^ 3  (3).
 13の100分の2と言ったところでしょうか
しかし、体積を変えずに1℃上げるエネルギーは.
 28.93(J)
です。.

結論
空間の温度がステファンボルツマンの法則にしたがっているなら、赤外線が空気を温めるなど不可能です。
暖めるには電子レンジのようにステファンボルツマンの法則から逸脱した大量の赤外線が必要だと言うことです。
温室効果は大量の赤外線を前提にしていませんから、温暖化させるエネルギー源を説明できません。
温室効果も物理的にはメチャメチャな概念なのです。




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「放射冷却」と呼ばれる現象については「放射冷却のメカニズム」を参考にして下さい。
「温室効果」と呼ばれる現象については「エネルギーからみた地球温暖化問題」を参考にしてください。
悲しいかな、「気象の常識は科学の非常識」と言ったところでしょうか・;







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