2013年06月12日、新潟県高田市の最高気温は35.9℃まで上がりました。
気象予報士はフェーン現象で上がったと解説します。
フェーン現象は湿った空気が山を越える過程で水蒸気が降水となり、その潜熱で空気を暖めます。
暖まった空気が、山を吹き下りてくる際に100m降りてくる毎に1℃上がる。
こんな感じで説明されます。
1.フェーン現象
「湿った空気が山を登る。」
これは、まあよいでしょう。
登るとき、エネルギー保存則から空気のエンタルピーと呼ばれるエネルギーが位置エネルギーに変わります。
エンタルピーはCpTで温度Tに比例します。
この温度変化が位置エネルギーになります。
-CpΔT=mgΔh
左辺にマイナスが付くのは、温度が下がると高さΔhだけ昇ったことを意味します。
本来は、100m毎に1℃下がるはずですが水蒸気があると水蒸気が雨になり、その際の潜熱により100m毎に1℃下がりません。
こうした空気が山を降りる際100m毎に1℃上がります。
私はこうした説明を聞くたびに
「何故、温かく軽くなった空気が吹き下りてくるのだろう?」
と思っていました。
図は1000mまで、100m毎に1℃温度が下がります。
この場合1000mはたしか凝結高度とか呼ばれるものです。
1000~2000mでは100m毎に0.5℃下げています。
この割合は、水蒸気の量によって変わってきます。
日本海側に吹き下りる時は100m毎に1℃上げています。
この図から日本海の水蒸気圧は低くなるはずです。
2.2013年06月12日の最高気温
2013年06月12日は台風3号が関東の南に進み、関東では東よりの風が吹き雨を降らせましたが日本海や西日本は晴れて気温が上がりました。
気象台等で観測しているベスト10は次のとおりでした。
高田 35.9
豊岡 35.1
津山 34.8
山口 34.5
松江 34.4
高山 34.3
舞鶴 34.2
日田 33.9
鳥取 33.7
和歌山 33.6
次の図は2013年06月12日15時の地上天気図です。
次の図は06月12日15時の各地の気温です。
おおよそ関東は20~23℃といった所ですが東海や日本海側では30℃程度になっています。
こうした現象を気象予報士さんはフェーン現象で東海や日本海側で気温が上がったと解説した訳です。
フェーン現象の説明では関東の水蒸気が雨になり、乾燥して東海や日本海側に吹き下りたことになります。
フェーン現象ならば、東京の水蒸気圧は高田市より高いはずです。
3.東京と新潟高田市の水蒸気圧
次のグラフは2013年06月12日の東京と新潟県高田市の水蒸気圧です。
ほとんど、水蒸気圧はかわりません。
確かに東京のほうが少し水蒸気圧は高いようですが・・
水蒸気圧はあまり変わりませんが気温が大きく違いますから、確かに高田市の相対湿度は低くなります。
しかしこの程度の水蒸気圧差で、22℃と30℃の違いが説明出来るのでしょうか?
次のグラフは東京と高田の地上相当温位です。
相当温位になじみが無い方は水蒸気を全部水した潜熱で、空気を暖めた温度と思って下さい。
温度は絶対温度でプロットしています。
日中は高田市の相当温位が高くなっています。
このことは、水蒸気を含めた空気のエネルギーが高田市のほうが大きいことを示しています。
フェーン現象が起きたのなら東京と高田市の地上相当温位は同じになるはずです。
この日の日本海側や東海の高温はフェーン現象では説明できません。
4.長野市の最高気温
この日、長野県長野市の最高気温予想は28℃でした。
多分、予報官は最高気温ガイダンスと呼ばれる統計資料を採用したのだと思います。
私は予想資料を見て、1~2℃高くしたほうがよいのかなと思いました。
その資料を見てみます。
次の図は12日12時、925hPa気温予想です。
長野市あたりの温度は24℃と予想されています。
温位は304Kとなります。
これは、地上を1000hPaだと仮定すると地上の温度は304-273=31℃になることを意味しています。
273は273kで0℃の絶対温度表示です。
これから先はさじ加減なのですが、長野市の標高は400m程度あり地上気圧は1000hPaに達しません。
31℃まで上がらないだろうと考えましたが、28℃は少し低いと感じました。
私が気温ガイダンスを修正するときは基本的にこうしたテクニックを使います。
古いタイプの予報官は天気が晴れる時経験的に最高気温予想は850hPaの温度に乾燥断熱減率から予想される温度差を加えます。
これは、日中、晴れた時の空気は理想気体になると仮定することと同じです。
このときも私は経験的に長野の空気は理想気体のような振る舞いをするようになると考えたのです。
偶然かもしれませんが、6月12日の長野の最高気温は29.8℃でした。
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