2016年4月8日金曜日

エントロピーと温位

エントロピーと温位

 気象学で温位や相当温位は重要な概念であるのですが、これがエントロピーであることが十分に理解されていません。
 等温位の大気は地表と上空のエントロピーが同じであることを表します。
 大気の変化はエントロピーが増大し比エントロピーが同じになるように起こるものです。
 残念ながら、気象学はこの物理学の基礎概念であるエントロピー増大則を無視した混乱した状態にあります

1.同じエントロピーの理想気体
 「等温位の大気は地表と上空のエントロピーが同じ」と話しました。
 基礎物理学では、理想気体の変化させた前後のエントロピーを議論します。
 大気では鉛直方向のエントロピーを議論する必要があるのです。
 ここでは、等エントロピーでも温度や圧力が違う理想気体にはどのような違いがあるのか?考えます
 
エントロピーが同じnモルの理想気体A、Bを考えます

B
A

P:圧力 V:体積 T:温度 S:エントロピー
nモルの理想気体ですから
PaVa=nRTa
PbVb=nRTb
そしてSa=Sbが前提です
Aを下層、Bを上層の空気と思ってもかまいません

エントロピーが同じだとAとBの間には次のような関係があります。

PaR/cp/Ta = PbR/cp/Tb=Const1   (1-1)

VaPacv/cp = VbPbR/cp     =Const2           (1-2)

TaVcv/cp = TbVbR/cp      =Const3          (1-3)

ここで、AとBのエントロピーは同じだが温度などわずかに違うとしましょう。
Pb=Pa+δP
Vb=Va+δV
Tb=Ta+δT
とするのですね

代表して(1-1)を計算しましょう。
PaR/cp/Ta = PbR/cp/Tb=(Pa+δP)R/cp/(Ta+δT)
   =PaR/cp/Ta{(1+(R/cp)δP/Pa)/(1+δT/Ta)}
    
1 =(1+δP/Pa)/(1+δT/Ta)
 =(1+δP(R/cp)/Pa)×(1ーδT/Ta)
 =1 +δP(R/cp)/PaーδT/TaーδTδP(R/cp)/Pa
δTδP/Paは0近似します

δP(R/cp)/Pa=δT/Ta
PaVa=nRT→Ta/Pa=Va/nRとcp ーcv=Rから

VaδP=n cp δT
となります。
結局(簡単ですので計算してみて下さい)

(1)(2)(3)から
VaδP=n cp δT      (1-1・・result)
(cv/cp)VaδP=ーPaδV    (1-2・・result)
ーPaδV=n cv δT                  (1-3・・result)

となりました ・・ ..?

(1-3・・result)に見覚えはありませんか?
δをdと書き直すと

ーPadV=ncvdT
準静的断熱変化の式ですね、これと
PV=nRTと微分したPdV+VdP=RdT
そしてマイヤーの関係式
cpーcv=R
から計算してまとめると(計算してみて下さい)

          ーPdV=ncvdT   (1-1・・div)
(cv/cp)VdP = ーPdV         (1-2・・div)
            VdP=ncpdT         (1-3・・div)


エントロピーが同じなら3つの関係が成立しなければならなので、
3つの関係式は全部同じ物理的内容をもっていることになります。

こうした考え方には馴染めないかもしれませんね^^;

基礎物理学では
ーPadV=ncvdTとPV=nRTから出発して
数学的に保存量(Const1とかConst2)があることを確認します
カルノーサイクルでエントロピーを定義し
エントロピーの性質(増大則)を調べたわけです。

ここで言いたいのはエントロピーから出発し、平衡状態(等エントロピー)では(1-1・・div)(1-2・・div)(1-3・・div)の関係が必要だと言うことです。



2.エントロピーと乾燥断熱減率
静水圧平衡を思い出してください(乾燥断熱減率 を見て下さい)

大気中に厚さ⊿Zの薄い円盤を考えます、円盤の面積をS、円盤中の空気の質量をMとすると力の釣り合いから

SP(z)=SP(Z+⊿Z)+Mg

となります。面積×高さ=体積ですね ^^; S⊿Z=V

0=S⊿Z×(dP/dZ)+Mg=VdP/dZ+Mg
VdP/dZ=ーMg
静水圧平衡で等エントロピーなら
VdP=ncpdT   (1-3・・div)
ですから
ncpdT/dz=ーMg
m=M/nは1モル当たりの質量です^^;気象じゃあなくしちゃうんだよなあ〜
dT/dz=ーmg/cp  (2-1)
大気が平衡状態(等エントロピー)なら乾燥断熱減率は必然となります




3.温位と乾燥断熱減率

PaR/cp/Ta = PbR/cp/Tb=Const1 (1-1)

(1-1)から温位が定義されます
温位をθとすると

(1000)R/cp/θ= PbR/cp/Tb
θ=Tb(1000/Pb)R/cp

θは気圧Pbの温位になりますね
しかし、(1-1)つまりθは平衡状態が前提です。
θと乾燥断熱減率とが矛盾しては意味がありません。
現実の大気は乾燥断熱減率になっていませんので温位で大気を比べることは誤りです。

ではどうすればよいのか?

T/dz=ーmg/cp (2-1)

から・・;

しっくりしないのでzをhと書きましょう

cpT+mgh = const (3−1)

ですね(^^) cpTはエンタルピーと呼ばれるエネルギーです、mghは明らかに位置エネルギーですね。

「エントロピーが同じならcpT+mghと言うエネルギーも同じになる」

ってことです

cpT+mghをエントロピーって良さそうですが・・;

名前をつける必要がありますが

エネルギーをエントロピーなんて言う必要はないでしょうね(^^;

(木村龍治先生あたりが決めてくれると嬉しいなあ)

現実の大気は等エントロピーになっていません(大問題ですが・・;)

500hPaと850hPaの空気塊を比べてみましょう。

温位で比べると


 
イメージですが・・

850hPaの空気塊Aは1000hPaにしても、現実の1000hPaの高さと違います

500hPaの空気塊Bも1000hPaにしても、現実の1000hPaの高さと違い地中にめり込みました

こんな高さの違うAB比べる物理的な根拠はありません。
一緒に並べて比べるべきですね。


それではどうすればよいのか?




 
答えは簡単で
地上まで断熱圧縮し同じ高度=0mで比べればよいのです。
???
でも・・圧力が違いますね?
比べてよいのか?
圧力の高い方(一般にA:850の気塊)を自由膨張*させて同じ圧力にすれば良いのです。
理想気体は自由膨張させても温度は変わらないのです。
温度が高いほうが1モル当たりの体積が大きく、質量密度は小さくなります。
つまり、地上まで下ろした空気の温度の高いほうが軽くて浮くわけですね。


上層と下層のエネルギー「cpT+mgh」を比べれば安定な大気かどうかわかるってことです
ただ、現実の大気は上空にいくほど「cpT+mgh」は大きくなっています。
大気の状態が不安定なのかは水蒸気の潜熱を加えて考える必要があります。 


しかし、温位なんて難しい形にして・・しかも間違えている・・

・・ ・・ ・・ バカだねえ〜〜〜

参考 温位の定義



*自由膨張はエネルギーを加えない、断熱膨張です・・
 いい加減に授業を聞いて「断熱膨張だからエントロピーは変わらない」なんて思うと単位がもらえません
 エントロピーが変わらないのは準静的断熱膨張です
 


リハビリは続く・・;

参考 温位の定義


リハビリは続く・・;

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