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2012年9月6日木曜日

南極の2つの大気を比べる


南極昭和基地の高層データを調べる」で、6月と8月の大気を比べました。
しかし、平均気温と気圧を用いて空気の質量密度を計算したため結果ははっきりしませんでした。
そこで個々の気温と気圧から空気の質量密度の値を加え改めて考え直したいと思います。
使用した気象データは、気象庁のホームページから得ました。
今回使用した南極の高層データは
1989~2011年の
21
に観測されたものです。

1.2つの理想気体の大気を比べる
まず、南極の6月と8月の空気を理想気体として考えその差をとります。
計算は地上の気圧と温度から質量密度を求め50m上の気圧を求めます。
乾燥断熱減率は0.01/m、100m1℃下がるとしました。
50m上は乾燥断熱減率に従って0.5℃気温が下がっているとして新たな気圧と温度で改めて質量密度を求めさらに50m上の気圧をもとめます。
こうしたことを繰り返して求めました。
一般気象学(P23)によると重力加速度は地上9.80730000m9.715m/sec2)ですがここでは概観を知りたいだけなので9.8を使いました。
実際の昭和基地6月の気圧は

30000mを超えても大気はありますが、これを理想気体とすると

25000mで絶対零度に達してしまいます。
このようにして8月の気圧も求めました。
理想気体と実在大気の違いで一番大きいのは気温の違いによるものだと思います。

さて、理想気体の6月から8月を引いた気圧差は次のグラフのとおりです。

気圧差の最大は高さ5700mで886Pa8.86hPaでした。
気圧は25000mまで全て6月のほうが高くなり逆転することはありませんでした。

6月から8月を引いた質量密度の差は上のグラフの通りです。
5000m程度まで6月のほうが質量密度が小さく、その後逆転します。

気圧差と密度差を比べると


当然ですが、気圧差と密度差の関係が綺麗に整っています。
南極昭和基地の高層データを調べる」の「5気圧差と質量密度差」で示した気圧差や密度差の図と比べると実在空気が奇妙であることが分かります。
実際の空気は理想気体ではないのです。

2.実在大気を調べる
今回は、質量密度のデータを整理しました。
そこで、気温は6月と8月の平均値を使い理想気体として気圧を求めてみました。
気圧高度分布には大きな違いはありませんでした。
次の表は実際に昭和基地096月の質量密度から気圧を計算し、実際の気圧と比較したものです。


Jで理想気体とした時の乾燥空気の気圧を計算しています。言わば乾燥空気圧です。
J2は高さ0mの乾燥空気圧で

F3*(B3B2*(9.80070.00000285667)*B2/100*J3

と計算しています。
F3は高さ毎の質量密度です。
(B3B2)は高度差です。ここに底面積1㎡の円柱を考えれば(B3B2)㎥の体積となります。
質量密度×体積=質量
ですからF3(B3B2)は質量です。
9.80070.00000285667B2
は重力加速度です。
B2は高さです。
重力加速度が高さによって違ってしまう為、直線近似しました。
重力加速度の資料は小倉先生の「一般気象学」P23から拝借しました。
「一般気象学」は非常に便利な教科書です。

F3(B3B2)9.80070.00000285667B2

は質量×重力加速度で言わばMgです。

底面積1㎡の円柱を考えていますから1㎡にかかる力ですから圧力の増加分を計算しています。
このままでは、N(ニュートン)/㎡=PaですのでhPaに変換する必要があるので100で割っています。

J3は高さ50mまでの圧力です。
J3J2と同様に計算しています。

Kでは実際の気圧と乾燥空気気圧の差を計算しています。
Kではデータが見えにくいのでLで移動平均しています。
言わば50メートルごとのデータではなく5×50m=250mごとのデータにしていると思って下さい。
次のグラフはこのように計算した実際の気圧から乾燥空気圧を引いた結果です。


25000m以上でマイナスの領域があり、気持が悪いですが残しました。
このあたりはデータ数が10個程度ですから、異常なデータが紛れこんだ影響かもしれません。
実際の空気が乾燥空気の質量密度より小さくなることはあり得ません。
一旦開いた気圧差が再び0になることはないはずですが10000m付近で0になっています。


昭和基地6月温位の温位を見ますと10000m付近で大きく大気の性質がかわるく高さのようです。

こうした事が係わっているのかもしれません。
しかし、よくわかりませんので空気が流れだしていると考えておきます。
(多分違う・・・。また、直感的には大気の性質が変わる高さが変わると、地表の温度が変わると思われます。)

10000mの下は再び気圧差が開いています。
単純に考えてはいけないのかもしれませんが、地上から5000m位までは0.5%位の質量が乾燥空気とは別にありそうです。
気圧データの精度については、「秋田の高層データをみる」などでわかると思いますおもいます。

3.南極の6月と8月の大気を比べる。
南極昭和基地の高層データを調べる」では平均気温と平均圧力から質量密度を計算する大雑把なものでした。
今回は、気温と気圧から個々の質量密度、いわば、乾燥空気の質量密度をデータ加えましたので少し詳しく調べられます。



上のグラフは1989201109時観測の個々データから質量密度を求め平均したものです。

次のグラフは6月の気圧から8月の気圧を引いたもので、層厚250mに対応するよう移動平均(以下のグラフも同じ)しています。

一方、質量密度の差は

この質量密度から、乾燥空気圧差を求めることができます。

上のグラフで気圧差(計算)としたのが6月と8月の乾燥空気圧差です。
曲線で表現できました。

A15000m
B:500010000の間
C:5000m

6月の質量密度が小さくなる領域があります。
南極昭和基地の高層データを調べる」ではデータが粗く、Aの領域は見えず、BCは一つに見えました。
 (前回は吹き出していると考えましたが、何故こんな領域があるのか不思議です。・・)


さて、気圧差にどんな意味については次の図を参照してください。



曲線:乾燥空気圧差より右にある点は6月の異物が8月より重い(多い)事、また、8月の空気が乾燥空気より軽いはずはありませんから、乾燥空気より重いことを表しています。
また、左にあれば6月の異物が8月より軽い(少ない)事になります。
 大まかに、乾燥空気の質量密度から6月と8月の気圧差は説明できると思ってよさそうです。 
 15000m以上では6月と8月の高さZにある異物δ6(Z) とδ8(Z)はほぼ同量あることになります。
 しかし、今回の資料ではδ(Z)=δ6(Z) =δ8(Z)の形までは分かりませんでした。

 すこし、細かく見ていきましょう。
06000m

5000m6月の異物が少ない領域がみられます。



参考までに、5000m位を境に上は観測回数が減っていきます。
上のグラフは移動平均ですのでイメージだと思ってください。

500010000m

BC領域に挟まれますが、しっかりとした異物の多い領域があります。

1000016000m

A以外は、異物が多くなっています。

1500030000m


わずかですが、6月の異物は8月より多いと考えてよいでしょう。
再び観測回数をみましょう。

15000m付近で観測回数が異常に増えています。
観測回数だけでも、15000m付近が特別な領域であることがわかります。
これはAと対応していそうで、何らかの大気の境界があるかもしれません。
BCでは観測回数は増えていませんから、メカニズムが違っているのでしょう。
気圧の観測回数から15000mの境界は分からなかったのかの疑問が残ります。
15000mはだいたい130hPa位ですが、ご覧のように気圧で整理しても気がつかないと思います。
しかし

気象学者はデータを整理する基本的な作業もやっていないことになりそうです。



付録 温位の式(エントロピー)の復習

スイマセンが個人的なメモだと思って下さい。

静水圧平衡を仮定すると気圧は
Ph=P0exp-∫(mg/RTz))dz (A
となります。
積分範囲は0mhmまでです。
T()を平均温度Tで近似する訳の分からないことをすると側高公式が得られます。
また、静水圧平衡では
mgz+CpT=Const     (B
ここまでは乾燥断熱減率を参照して下さい

が成り立ち
dz=-(Cp/mg)dT   (B‘)
となります。

B´)から乾燥断熱減率(dT/dz)が分かります。
ここで、(B´)を(A)に代入します。

P=P0exp∫(Cp/R(1/T)dT   (C

積分範囲は地上0mの温度T0)からhmTh)までとなります。
C)の両辺で対数をとって整理していきます。

lnP(h)=lnP0+(Cp/R)(1/T)dT
積分範囲はT0)からT(h)です。

lnP(h)=lnP0 +( Cp/R)lnT(h)-lnT0))

lnP(h)-(Cp/R)lnT(h)=lnP0)-(Cp/R)lnT0

P(0)T0)は地上の気圧と温度で、初期値と呼ばれるものです。
地上のP0)とT0)で
lnP0)-(Cp/R)lnT0)=Const=定数
とおきます。
すると任意の高さ例えばh=5500mにおける
lnP(h)-(Cp/R)lnT(h)
の値がわかります。
それは
lnP(h)-(Cp/R)lnT(h)=ConstlnP0)-(Cp/R)lnT0
です。

この訳のわからない lnP(h)-(Cp/R)lnT(h) がエントロピーです。
PV=RTを用いて変形してPVTVの組み合わせでもエントロピーの表現は可能です。

ついでですので、温位をもとめる筋道ですが
温位は、例えばP500=500hPa50000Paの温度T500から
P10001000hPa100000Paの温度T1000を求めます。

lnP500-(Cp/R)lnT500lnP1000-(Cp/R)lnT1000
からT1000を求めます。
T1000が温位θです。
実際の6月のデータから高さ毎のlnP(h)-(Cp/R)lnT(h)を求めたのが下です。

温位と比べてみますと

レンジの違いとプラス・マイナスの違いはありますが、温位はエントロピーであることが分かるとおもいます。
 空気は上空に行くに従いエントロピーが小さくなる不思議な気体なのです。
 これを、気象学者は上空に行くほど温位が高く安定だから良いのだとしているのです。
 
 勿論、彼らは私より物理学は詳しいです。思い込みと言うやつかもしれません。このように第2法則に反しているようにみえる気体を相手にして、結果的に第2法則を無視する道を選んだとおもいます。

 
 ついでなので、エントロピーが急に小さくなる5000と10000mの間にある折れ曲がりが
かもしれません。
 wikipediaでの対流圏界面の厳密な定義はあまり物理的な定義には思えませんでした。

 

さて、
lnP(h)-(Cp/R)lnT(h)=Const
ですが、Const(エントロピー)の値は初期値によって違ってしまいます。

空気を理想気体とした大気2つあるとします。
例えば、6、8月の現地気圧と地上気温の平年値は6P6987.1hPa98710PaT6=-15.2℃=258.0k、8P8982.0hPa98200PaT8=-19.4℃=253.8kです。
任意の高さhの気圧と温度をP6h)、T6h)、P8(h)T8(h)としましょう。
其々
lnP6h)-(Cp/R)lnT6(h)=lnP6-(Cp/R)lnT6
lnP8h)-(Cp/R)lnT8(h)=lnP8-(Cp/R)lnT8
差をとると
ln(P6(h)/P(8))(Cp/R)ln(T6(h)/T8(h))=ln(P6/P8)-(Cp/Rln(T6/T8)
複雑な式に見えますが、実際に数値を入れてみますと

ln(P6(h)/P8(h))4.01 ln(T6(h)/T8(h))0.005180.065816≒-0.06

ln(P6(h)/P8(h))4.01 ln(T6(h)/T8(h))0.06

Yln(P6(h)/P8(h))
X= ln(T6(h)/T8(h))
とすると
Y=4.01X0.06
と単純な式になります。

このグラフは「1.2つの理想気体の大気を比べる」で使用した6月と8月を理想気体と仮定した時のデータを用いて作成しました。
少し歪んでいるのは気温減率を0.01℃/mにしたのが主因じゃないかと思います。

実在大気でもこのグラフは作れます。



物理的な意味はまだ不明ですが、赤くプロットした高さは900011000mです。
6月の温位からは10000mより下に大気の境界がありましたが、境界と関係があるかは分かりません。




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