ここから金星の地表面に100m近づく毎に約1℃上がります。
これは温室効果ではありません。
乾燥断熱減率のとおりになっているのです。
乾燥断熱減率によると、金星の地表面と雲の間には約500℃の温度差が必要になります。
たとえ雲の温度が絶対零度 0k=-273℃ としても・・地表はプラス227℃です。
金星の地表面の温度が 225k=-48℃になるなど物理的にありえません。
12 研究:金星の放射平衡温度と温室効果
http://homepage1.nifty.com/kow1/jugyo/3-12.htmlによりますと金星の
観測表面温度は735K
だそうです。
しかし、地球から金星を見るとその温度は-48℃に見えます。
金星は雲に覆われていますから放射平衡温度は雲の表面温度だと思います。
「CO2と温室効果」で金星表面の高温は乾燥断熱減率から当然であることを話しました。
乾燥断熱減率は理工系の大学1年生で話題にされますが、あまり重要な事項とはみなされていないようです。気象を勉強する大学でも、暗記項目となっているようです。
ここでは大学1年生レベルの物理と数学を使い復習がてら乾燥断熱減率について考えたいと思います。
まず、乾燥断熱減率を考えるには静水圧平衡を前提にしなければなりません。
1.静水圧平衡
平衡状態とは「外界とのエネルギーや物質のやり取りをなくし、最終的に何の変化も起こらなくなった状態」だったと記憶しています。静水圧平衡が平衡状態とは別物なのかもしれませんが、別物と考える方は平衡状態も必要だと考えて下さい。
静水圧平衡は力学的に釣り合っています。
下の図を参考に釣り合いの式を書き下してみます。
圧力は単位面積当たりの力ですから
下向きの力F↓は
F↓= A×P(z+Δz)+Mg
です。
F↓= A×P(z+Δz)+Mg
です。
体積 V=ΔZ×A 中に平均分子量mの分子がnモルあるとすると
M=nm となります。
上向きの力F↑は
F↑=A×P(z)
です。
F↑=A×P(z)
です。
下向きと上向きの力は釣り合っていますので
F↑=F↓
A×P(z+Δz)+Mg=A×P(z) (1-1)
となります。
P(z+Δz)は
P(z+Δz)≒ P(z)+Δz×(dP(z)/dz)
と、近似することができ(1-1)は
A×Δz×(dP(z)/dz)+Mg=0
となります。ここでAは円盤の面積でΔzは高さでA×Δzは円盤の体積V(z)です。
V(z)×dP(z)+nmg×dz=0 (1-2)
乾燥断熱で必要なのは(1-2)なので、後は結果だけを示します。測高公式は(1-2)と理想気体の状態方程式
P(z)×V(z)=nRT(z) (1-3)
を利用してT(z)の代わりに平均温度T´を用いて
P(z)=P(0)EXP(-mgz/RT´)
とされています。
気象ではnモルの理想気体を考えず、m=1g(グラム)の空気を考えて、何か訳のわからない形にするのが普通です。
2.エントロピー
私にエントロピーを説明するほどの能力はありません。
ここでは、読む方の常識をたよりエントロピー増大則とはどのようなものか見たいと思います。
図のようなそれぞれ断熱材で作られた部屋と箱があり、理想気体が入っています。箱は蓋が開閉できます。
箱の外の圧力P、温度Tout、エントロピーSoutで蓋が閉じた箱の中は圧力P、温度Tin、エントロピーSinとします。圧力Pは共通で、Tin≠Tout とします。
このとき、部屋全体のエントロピーはSall
Sall = Sin + Sout
となります。
さて、蓋をとると部屋と箱の中の圧力と温度は変化して新しい平衡状態となり同じ圧力と温度になります。
部屋全体の新しいエントロピーSall´はSallより大きくなるのは、ご承知のエントロピー増大則です。
これを言い換えますと…
新しい平衡状態では、
「部屋の中はどこの1モル当たりのエントロピーは同じ値*1になる」
とも言えます。
「平衡状態にある理想気体は、どこの場所の1モル当たりのエントロピー(比エントロピー)は同じになる。」
これは第2法則の言い換えで「法則」だと思って下さい。
さて、重力の影響を考えましょう。
重力場においても平衡状態のとき
「どこの場所の比エントロピーは同じになる。」
この法則は成り立ちます。
さて、部屋の高さが3500m程度の大きな空間で平衡状態となった理想気体で満たされているとします。
高さ3000mの位置で理想気体を箱に閉じ込め、位置エネルギーを使って「準静的に断熱圧縮」して500mまで降ろします。
準静的に断熱圧縮するとは、
エントロピー => 比エントロピー
を変化しないように圧縮させると言う意味です。
エントロピー => 比エントロピー
を変化しないように圧縮させると言う意味です。
比エントロピーは変化させていませんから、圧縮した「3000mの理想気体」は500mにあるの理想気体の温度、圧力と同じになっていなければなりません。
もし、違っていれば箱の蓋をあけると空間と箱のあわせたエントロピーは増大しますので空間の理想気体は平衡状態ではなかったことになります。
Panasonic DMC-FX35で撮りました、
I need a new digital camera …
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3.準静的な断熱圧縮
「準静的な断熱圧縮」=「エントロピーを変化(増大)させない圧縮」とはなにか?との疑問が残りますが、私にはその疑問に回答できるほどの知識はありません。
申し訳ありませんが、天下り的に説明させてもらいます。「準静的な断熱圧縮」が初めての方は基礎物理か「熱力学」の入門書を読んで下さい。
ネットで調べても…訳がわからないと思います。
理想気体の内部エネルギーを大きくする場合、エントロピーを変えない方法と大きくする方法が考えられます。
エントロピーを変えない特殊な方法のなかの1つが、準静静的な断熱圧縮です。
エントロピーを増大させる普通(?)の方法は、プロペラやヒーターでエネルギーを加えて理想気体の内部エネルギーを大きくします。
ア.準静的な断熱圧縮をして、理想気体の内部エネルギーを大きくする。このとき理想気体のエントロピーは増加しない。
イ.プロペラを回して(かき回して)理想気体の内部エネルギーを大きくする。理想気体のエントロピーも増加する。
ウ.熱を加えて理想気体の内部エネルギーを大きくする。理想気体のエントロピーも増加する。
実際に理想気体の内部エネルギーを大きくするときは摩擦熱でプロペラのような効果が残り、また、完全な断熱材などありませんからヒーターのような効果が残ってしまいます。
実際の内部エネルギーの増加を
準静的な断熱圧縮での内部エネルギーの増加を dW
プロペラ効果での内部エネルギーの増加を dW´
ヒーター効果による内部エネルギーの増加を dQ´
とすると
内部エネルギーの増分は
dU=dW+dW´+dQ´
と考えられます。
そして、エントロピーを増加させない方法はdW´、dQ´を取り除き
dU=dW
となります。
今考えているピストンでの準静的な断熱圧縮では
dW=-PdV
となります。
マイナスがつくのは圧縮するのでdⅤの値がマイナスなるからです。
理想気体の内部エネルギー(粒子の運動エネルギーの総和)の増加は温度の上昇(平均運動エネルギーの増加)で確認できます。
比例定数をCvとすればnモルの理想気体の内部エネルギーの増加分dUは
dU=nCvdT
として確認できます。
dU=nCvdT とd dW=-PdVから
nCvdT=-PdV (3-1)
(3-1)となるような変化ではエントロピーは変化(増加)しないことになります。
ここで、(3-1)について見方を少し変えます。
nモルの理想気体を2つ考えます。
その2つの理想気体はほとんど同じ圧力と温度なのですが、ほんのわずか違うとします。
その違いが(3-1)なら2つの理想気体のエントロピーは同じだといえます。
片方の理想気体を準静的に断熱圧縮した結果が、他方の理想気体とみなせるからです。
繰り返しますが、理想気体の平衡状態では1モル当たりのエントロピーがどこでも同じなのです。
(3-1)と理想気体の状態方程式から熱力学的エントロピーの式が求められます。
4.乾燥断熱減率
やっと準備ができました。「1.静水圧平衡」で乾燥断熱減率には(1-2)と(1-3)
が必要だと予告しました。
(1-2)のdP(z)はP(z+Δz)とP(z)の2つの空気の差を表しているとも考えられます。
もし、この2つの理想気体のエントロピーが同じ(平衡状態にある)なら(3-1)の
nCvdT=-P(z)dV
の関係も必要となります。
2つの式をつなぎあわせるのが理想気体の状態方程式(1-3)です。
(1-3)を微分して整理します。
P(z)×dV(z)+dP(z)×V(z)=nR×dT(z)
-P(z)dV(z)=dP(z)×V(z)-nR×dT(z) (4-1)
これを(3-1)に代入すると((3-1)は nCvdT=-PdV でした)
nCv×T(z)=dP(z)×V(z)-nR×dT(z) (4-2)
ここで、
Cp-Cv=R (マイヤーの関係式 Cp:定圧モル比熱 Cv:定積モル比熱)
という関係がありますので、
(思い出せない方にはごめんなさい、熱力学の教科書を参照して下さい。気象では普段は1g当たりの定圧(定積)比熱を使うのでマイヤーの関係式が見えてきません。学生さんは大変だと思います。)
nCpdT(z)=dP(z)×V(z) (4-3)
となります。ところで静水圧平衡で dP(z)×V(z)+nmg×dz=0 (1-2) でしたので(4-3)は
nCpdT=―nmg×dz
nは共通で約分して整理すれば乾燥断熱減率となり
dT/dz=-(mg/Cp) (4-4)*2
積分すれば
Cp×T(z)+mgZ= Constant (4-5)
となります。
ここまでの議論で、zは特に特定してはいませんのですべての高さzで(4-4)(4-5)が成り立ちます。
理想気体を大気に持つ惑星はこうした(4-4)(4-5)の関係をもたなければならない、あるいはこうした関係を持つように大気は変化*3をする事になります。
そして、金星では(4-4)(4-5)がよく成り立っているようです。
5.温度平衡になっていない?
さて、熱力学に詳しいかたは疑問に思うかもしれません。温度が高さにより異なっていますので温度平衡になっていないからです。
私は、真面目に「熱力学」を勉強したわけではありませんが、温度平衡を仮定しない「熱力学」の教科書は無いようです。
たぶん、第0法則や熱伝導でエネルギーのやり取りがゼロサムになると仮定した為だと思われます。
しかし、大気は熱伝導でエネルギーの交換をしているわけではなく、平衡状態でも直接粒子の交換でエネルギーの交換をしています。
大気のエネルギーのやり取りは、直接、位置と運動エネルギー等を持った粒子の交換でエネルギーのやり取りがゼロサムになっているということです。
重力場で位置エネルギーをもつ粒子のやり取りはする場合はこのような温度の違いは必然だと私は考えます。
孤立系の平衡の必要条件は
エネルギーが保存することであり、
エントロピーが極大値(エントロピー増大則からの要請)
になることです。
エネルギーが保存することであり、
エントロピーが極大値(エントロピー増大則からの要請)
になることです。
無理に温度が同じだとすると、地上付近の圧力が高いのは明らかですのでエントロピーの偏りができてしまいす。
温度平衡は、はじめから与えられる条件ではないと考えます。
*1
このことは、理想気体について言えることです。
例えば、気体と液体の水の系は同温同圧でも気体と液体のエントロピーは異なります。
ただし、こうした系でも平衡条件はエネルギーが一定のもと、エントロピーの極大が必要条件になります。
*2
気象ではm=1g(グラム)として、無謀にもCpとして空気1g当たりの定圧比熱の値を使うのが一般的です。
何故1g当たりの理想気体の状態方程式にして議論するか私には理解ができません。
また、1モルあたりの理想気体の状態方程式で相当温位を計算したら比湿や混合比は必要ありませんでした。
*3
地球でも日中にこうした温度分布を示すことがあります。
(温位をご存じの方は「一般気象学」[第2版]小倉義光 著 P156 図6.25参照)
日中に1500m位まで乾燥断熱減率(見掛け上、等エントロピー)になりますが、夜間には地表から冷えてきて、地表付近のエントロピーが小さくなります。
メカニズムは分かりませんが、こうした冷却は程度の差はあれ、毎日起きています。
晴れて、風のない明け方に起こる冷却現象はこうした冷却現象が強まった例だと私は思います。
ワケの分からない冷却現象ですが、原因の1つは空気が理想気体でないことによるものだと思います。
ワケの分からない冷却現象ですが、原因の1つは空気が理想気体でないことによるものだと思います。
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