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温位エマグラムを見慣れると2つのパターンが気になります。
Structure of Typhoon by Potential Temperature emagram, etc.
温位エマグラムを見慣れると2つのパターンが気になります。
高さによらず同じ温位になる分布と同じ相当温位となる分布です。
温位が同じ空気は理想気体として等エントロピー、相当温位が同じ空気は水蒸気を含めて近似的に等エントロピーになっているケースと考えられます。
関東地方で沿岸前線が形成されるとき、高さによらず湿度がほぼ100%で相当温位が同じとなることがあります。
こうした鉛直分布は雷を伴い激しい雨をもたらす危険信号です。
ここでは沿岸前線を材料に考えたいと思います。
1.等温位
100m以下に薄い寒気が溜まり、寒気の上1000m付近まで同じ温位=等温位になっています。
温位は圧力1000hPaを基準に
θ(z)=T(z)+(mg/Cp)(z-z1000)
でした。
しかし、これではz1000の不確定性が残ってしまいますので
1000hPaではなく地表面(海抜0m)を基準に
θ(z)=T(z)+(mg/Cp)z (1-1)
と定義すれば、解析的に扱うことができるようになります。
等温位ならdθ(z)/dz=0で、dT(z)/dz=-(mg/Cp)で乾燥断熱減率となります。
乾燥断熱減率は空気の成分を理想気体として静水圧平衡を仮定して求めたものでした。
ここで、相当温位≠温位ですので水蒸気がないわけではありません。
水蒸気があっても乾燥断熱減率と同じになることがありますので、「乾燥断熱減率」と言う呼び名は適当ではないのかもしれません。
等温位は理想気体が前提ですから水蒸気は理想気体として振る舞っていると考えられます。
「大気成分とギブスのパラドックス」で論じたように、理想気体成分は分圧比が高さによらず一定です。
高さZの水蒸気圧、圧力をE(z)、P(z)とすると
E(z)/P(z)=Const1
となっているはずです。
下のグラフはP(z)/E(z)をプロットしたものです。
P=P0EXP--∫(mg/RT)dz´
(積分範囲は0からz)
と静水圧平衡を仮定すると地表付近から1000m程度は
E(Z)=Const1×P0EXP-∫(mg/RT)dz´
となっていると考えられます。
次のグラフは、2011年01月08日21時の舘野資料からP(z)/E(z)をプロットしたものです。
温位エマグラムに戻ると、地表から1000m付近に向かって相当温位と飽和相当温位の差が小さくなって(湿って)います。
地表には冷たい寒気があり上昇流など考えられません。拡散により1000m付近が湿ったと考えられます。
2.沿岸前線
このように、関東平野では地表付近に寒気が溜まり次第に上空が湿ってくることがあります。
それが極端になると寒気の厚さは500m程度に達し、温かい海上との間で沿岸前線と呼ばれる地形的な前線を形成します。
下のグラフは、舘野で2006年1月14日9時の観測値から作成した温位エマグラムです。
舘野 2006年1月14日09時
地上から500mに寒気が溜まっていますが500~6000mの相当温位は310~311kとほぼ等相当温位になっています。
下の図は沿岸各地の14日09時のモデルの予想です。
詳細は省略しますが、関東地方の沿岸部を中心に6000m付近まで約310~315kの等相当温位の巨大な空気の塊が乗っていました。
こうした温位エマグラムをみると、地上で海上から相当温位315k以上の暖気がはいると、その暖気は一気に6000m程度まで上昇すると考えられます。
雷を伴った激しい雨が降る要注意のサインです。
また、このとき1000hPaで次のように解析されていました。
駿河湾から相模湾・東京湾を抜けて銚子にかけて相当温位の集中帯が沿岸前線に対応しています。
次の図は当日15時の地上解析です。
そして次の図は当日18時の実況です。緑の315線は地上の相当温位315kを意味しています。
地上の相当温位310~320kの間で雨粒のレーダーエコーが強まっていることがわかります。
おそらく、地上の付近の空気が一気に鉛直方向へ6000m程度上昇していると考えられます。
3.参考に・・・
まだ、煮詰まっておらず、数式をいじっている段階ですので流し読んで下さい。
1000hPaを基準に温位は
θ=T(z)+(mg/Cp)(z-z1000)
相当温位
θe=T(z)+(mg/Cp)(z-z1000)+{e(z)/P(z)}L/Cp
でした。
これは静水圧平衡(平衡状態)達した大気についての定義ですので、実際の大気に適用するとz1000の値が気圧面毎に違ってしまします。
ここで、1000hPaではなく地表面(海抜0m)を基準に
θ(z)=T(z)+(mg/Cp)z (3-1)
で相当温位は
θe(z)=θ(z)+{E(z)/(P(z))}L/Cp (3-2)
と定義できます。
このよう定義をすると大気の鉛直分布を解析的に調べられる可能性が出てきます。
舘野2006年1月14日09時のように、約湿度100%で相当温位が高さによらず一定になるなどという現象が偶然に起きたと考えにくいことです。
さて、水蒸気圧E(z)は露点温度の関数E(Td(z))とみなせます。
湿度100%では温度と露点温度とは同じになりますので、水蒸気圧E(T(z))ともみなせます。
こうしたケースでは相当温位(3-2)は
θe=θ(z)+{E(T(z))/P(z)}L/Cp (3-2)´
となります。
また、等相当温位ですから
θe(z)=Const
となります。
(3-2)´をzで微分すると
dθe(z)/dz=0ですので
dθ(z)/dz+(L/Cp)×d{E(T(z))/P(z)}/dz=0 (3-3)
となります。
式が見難くなりました。まず、
Q(z)= E(T(z))/P(z)
としましょう。(3-3)は
dθ(z)/dz+(L/Cp)×dQ(z)/dz=0 (3-3)´
dQ(z)/dzですが、
dQ(z)/dz=
(1/P(z))(de(T(z)/dz)-(E(T(z))/P(z)2)(dP(z)/dz)
です… 見難いですね、しかたがないのでP(z)=P、T(z)=T、E(T(z))=E(T)と書きます
dQ(z)/dz
=(1/P)(dE(T)/dz)-(E(T)/P2)(dP/dz)
=(1/P)(dE(T)/dz)-(Q(z)/P)(dP/dz)
ここで、dE(T)/dzやdP/dzを計算しなければなりません。
天下りになりますがPは
P=P0EXP(-∫RT/mgdz´) (3-4)
(積分範囲は0~Z)
で近似してよいと思います。
これは
dP/dz=-(mg/RT)P (3-4)´
となります。(静水圧平衡で近似しているだけです)
E(T)はクラペイロン―クラジウスの公式から
dE(T)/dT=L/T⊿v≒L/Tv
で、Ev=RT(理想気体)として
dE(T)/dT=E(T)L/RT2 (3-5)
とします。
以上からdQ(z)/dzは(3-4)´
dQ(z)/dz
=(1/P)(dE(T)/dz)-(Q(z)/P)(dP/dz)
=(1/P)(dE(T)/dz)+(mg/RT)Q(z)
となり、dT/dT=1を使って1項目を変形すると
=(1/P)(dE(T)/dT)(dT/dz)+(mg/RT)Q(z)
となり、(3-5)を用いると
=(1/P)(dT/dz)E(T)(L/RT2 )+(mg/RT)Q(z)
={(dT/dz)(L/RT2 )+(mg/RT)}Q(z)
(3-1)からdθ(z)/dz=dT/dz+mg/CpですからdT/dz=dθ(z)/dz-mg/Cpですから
={(dθ(z)/dz-mg/Cp)L/RT2 )+(mg/RT)}Q(z)
となります。これを(3-3)に代入すると
dθ(z)/dz+(L/Cp)×{(dθ(z)/dz-mg/Cp)L/RT2 )
+(mg/RT)}Q(z) =0
+(mg/RT)}Q(z) =0
dθ(z)/dzでまとめると
{1+(L2/RT2 Cp)×Q(z)}(dθ(z)/dz)
+(L/Cp)×{-mgL/CpRT2 +(mg/RT)}Q(z)=0
+(L/Cp)×{-mgL/CpRT2 +(mg/RT)}Q(z)=0
これからdθ(z)/dzは
dθ/dz=
-(L/Cp)×{-mgL/CpRT2 +(mg/CpRT)}Q(z)/{1+(L2/RT2 Cp)×Q(z)}
=
-{-mg(L2/RT2 Cp2)+(L/Cp)(mg/CpRT)}Q(z)/{1+(L2/RT2 Cp)×Q(z)}
=-{-mg/Cp+(T/L)mg}Q(Z)/{RT2Cp/L2+Q(z)}
={mg/Cp-mg(T/L)}/{RT2CpL-2Q(z)-1+1}
Q(z)=E(T)/Pと定義したことを思い出すと
={mg/Cp-mg(T/L)}/{(P/E)RT2CpL-2+1} (3-6)
Cp= 29.1 J/mol K
R= 8.314 J/mol K
L=46620 J/mol
T≒220~320K
P/E=100~数1000
とするとmg(T/L)はmg/Cpの10~20%で(P/e)RT2CpL-2は1~100程度になるようです。
…申し訳ありませんが(3-6)これを確かめる気力は私にはありません。計算もなにかあやしい…
ともかく(3-6)が誤っていてもdθ/dzについて物理的な考察を加えるべきと思います。
ここで申しあげたいことは、
1. 鉛直的に等温位になるのは、水蒸気が理想気体とみなせて比エントロピーがどこでも同じになるわけですから、大気にはこうした状態に向かって変化する傾向があるだろうということ。*
2. 湿度100%(湿って)で鉛直的に等相当温位とは、比エントロピーがどこでも同じだと言うことですから、こうした状況に向かって大気の状態は変化する傾向もあるだろうということ。
です。
高気圧のなかでは鉛直方向の相互作用は、この2つの鉛直分布がおそらく基本になり鉛直分布になんらかの法則性を見出す可能性があると思われます。
LUMIX DMC-FX35で撮影しました
*温位エマグラム(2011年01月08日21時の舘野)をみると等温位になってはいますが、等相当温位にはなっていません。
このときの温度減率は0.0090(℃/m)でした。
E(z)/P(z)=Const1と置けるとするとdθe/dz=0となり相当温位も等相当温位になっていなければならないはずです。
厳密に等温位になっているか?というと1k程度の違いはありました。
この違いが、dθe/dz=Constになっているのかもしれません。
このあたり、まだまだ考えなければならないこと(謎)があります。
Tweet to @takanosunotama
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