館野の高層資料(09時観測の平年値)から温位エマグラムを作成して見ました。
館野の平年値グラフを示す前に
現行の1000hPaと地表面を基準とした温位エマグラムを比べます。
従来の温位や相当温位は例えば500hPaの空気を位置エネルギーなどを使って1000hPaまで断熱圧縮した値を使っています。
ややっこしい話ですが、ここでは1000hPa面を基準としていないのです。
理由は位置エネルギーを使って850hPaと500hPaの空気を1000hPaまで断熱圧縮するとそれぞれの位置が違ってしまうからです。
その位置エネルギーの差は誤差になります。
次に示すのは従来方式で計算した館野8月9時観測のグラフです。
ご覧のように自由対流高度はありません。8月は平均的に安定な大気と判断されてしまいます。
次は地表面を基準としたグラフです。
この方式では4500メートルくらいに自由対流高度があります。
次は、台風接近時の相当温位の断面図です。
上空に行くほど相当温位が高いですから台風なのに絶対安定となってしまっています。
それでも、FUKUOKAあたりが一番注意(中心に近い)すべきとわかります。
次に福岡の地表面基準グラフです。
地上付近の空気は15000メートルまで上昇することになります。
このように従来の温位や相当温位は誤差のため不安定な大気を安定と表現することがあります。
現場では昔(今も?)SSI(ショワルター安定指数)がプラス3℃より低いと不安定との経験則があったくらいです。
余計なことが長くなりました。
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次に本題の館野偶数月のグラフを示します。
平年値からはあまり明確ではないのですが、館野は冬に特徴があるようです。
舘野 2011年01月20日9時
札幌2011年01月20日9時
秋田2011年01月20日9時
八丈島2011年01月20日9時
潮岬2011年01月20日9時
福岡2011年01月20日9時
館野では地表付近に強い冷気が溜まっているのがわかります。
他の観測地の資料と比べると異常にも思えます。
実際のデータは
館 野 2011年1月20日9時
気圧(hPa) 高度(m) 気温(℃) 相対湿度(%)
1009.7 26 0.2 73
1008.5 35 0.1 63
1005.4 60 -0.4 64
999.4 108 0.6 56
996.5 131 2.2 47
992.5 164 3.6 38
969.4 355 2.8 34
925 732 -0.1 32
879.5 1132 -3.7 39
856.6 1340 -4.8 32
となっていました。
ご覧のとおり、上空150mのほうが、地上付近より温度が高くなっています。
他の地点では地表付近が等温位になっていますから、上空にいくほど100m毎に1℃程度温度が下がっているはずです。
舘野は他の海岸に近い観測地とは違い、関東の内陸にあります。
内陸ではこうした冷気が溜まりやすいと判断してよいと思います。
海岸付近ではこうした冷気は非常に薄く溜まる程度で数100m程度まで溜まることはないようです。
私は、こうした冷気の原因が分かればこの程度冷気は海上に流すことは可能なのではないかと思えます。
そうしたことが可能なら、かなりのエネルギー消費を抑えられると思います。
その前に残念なのは、現在の気象庁の高層資料整理では地表付近が粗すぎます。
気圧面でだけでなく高度別にも、きめ細かく整理し直してくれないかと思います。
国際的取り決めがあるのかもしれませんが、相対湿度などデータとして整理する意味はほとんどありません。
相対湿度と温度から、露点温度や水蒸気圧を計算し、相当温位を計算することになり、計算のたびに誤差が付きまとうことになります。