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2016年9月10日土曜日

測高公式


測高公式
 
南極昭和基地では1968年3月から観測されているようです
しかし、1980年1月まで高度のデータ2~数ポイント少なくなっています。
これでは、位置エネルギーが得られずおよそ12年分のデータがもったいない。
そこで、気圧と温度データ測高公式をもちいて高度を補足してみました

1.測高校式
 
まず、どのようなデータか具体的に見ます
次の表は1980年01月01日09時のデータです

気圧 高度 気温 湿度 
985.0,  21,  -1.6, 85
955.0, ///,  -1.1, 65
870.0, ///,  -5.5, 46
637.0, ///, -25.7, 77
609.0, ///, -23.5, 50
584.0, ///, -24.3, 24
515.0, ///, -30.1, 57
428.0, ///, -40.2, 51
294.0,8640, -56.5,///
194.0, ///, -44.5,///
 72.0, ///, -37.2,///
 39.0, ///, -36.8,///
 17.0, ///, -28.9,///

高度データが揃うのは1980年2月以降のようです。
このままでは、各気圧面の位置エネルギーが計算できません。

測高公式は
P1=P0EXP(-∫mg/RTdh)
から求め、次のようになります。

ln(P1/P0)=-(mg/R)(1/T*)(h1-h0)

T*は平均温度で
T*=(T0+T1)/2

この測高公式から
h1-h0=-ln(P1/P0)T*(R/mg)
h1=h0-ln(P1/P0)T*(R/mg)

h1=h0-ln(P1/P0)(R/mg)(T0+T1)/2

これで、気圧面P1の高さh1が求まります

ところで南極の重力定数は少し大きいそうでg=9.83
m/sec/secとしました
本来gは高さhの関数で
 g(h) = 9.83 −0.0000031h   (g)
くらいで近似できそうですが面倒なので割愛しました。

次に、基本的な定数です

R=8.314472J/K/mol
m=28.95712665g/mol=0.02895712665 kg/mol

Rはガス定数
mは乾燥空気の平均分子量でArまで考慮した値です
 
結果
R/mg=0.0342353134
としました。

プログラムを見るより具体的に表計算の様子をみましょう
h=h0-ln(P1/P0)(R/mg)(T0+T1)/2
を計算すればよいわけで

-ln(P1/P0)   : A
(T0+T1)/2   : B
R/mg        : C
h0              : D
h1=ANS=D+A*B*Cで求めています
 
 


 
 
 
 
 
順繰りに気圧と温度を使って観測した気圧面の高さを求めているわけですが・・;
この例では
343hPaの高度7550mの観測値に対し、測高公式で343hPaの高さは7516mでその差は
なんと34m!
風船に観測機器を付けて観測する粗っぽいイメージを勝手にもっていたのですが気圧と温度の観測値
が非常に正確でないと、こうした結果にならないと思います。

gをおなじみの9.8にとすると誤差は小さくなりますが、ある理由(後述)で9.83を使います。
南極のgは9.8ではなく9.83なのです。


2.観測された高度と測高公式との差
データは1968年3月1日から1980年1月31日までの09時(00z)に観測されたものを用います。
高度が観測された気圧面は20~434hPaで、気圧別に集計しました。
グループ分けにとくに理由はありません。

グループは以下のとおりです
  20~100hPa 資料数    372 採用しなかった資料数2
 101~200hPa 資料数   799 採用しなかった資料数2
 201~250hPa 資料数1196 採用しなかった資料数6
 251~300hPa 資料数 1619 採用しなかった資料数5
 301~434hPa 資料数   952 採用しなかった資料数4

採用しなかった資料は測高公式から求めた値と1000程度以上の差があったものです。
観測の失敗というより誤記のように見受けられました5桁のデータを0を付け忘れ、
4桁で記入してしまったみたいな・・;

2-1  20~100hPa
観測値から測高公式で計算した値を引いた値の平均(以下 平均)は
⊿=41.9m
平均の標準偏差σ=24.9 m
平均高度     H=17289.5 m
平均気圧     P=70.5 hPa



観測された高度 17289.5mに対し
測高公式で得られる値Xの約95%(だっけ?)は次式の範囲にあると考えてよさそう

H+⊿-2σ<X<H+⊿+2σ => 17281.6<X<17381.2

17300mの観測値に対し17300から17380mくらいに計算されるわけですから測高公式の精度に
問題なさそうです。
クラスターから離れた誤記入くさいデータ2つをとると、もう少し精度は上がりそうです・・;

2-2  101~200hPa
平均        ⊿= 25.6m
平均の標準偏差  σ= 27.8 m
平均高度     H= 12188.4 m
平均気圧     P= 159.3 hPa





なにか気持ちがわるいですね、クラスターから離れたデータは取るべきかもしれません・・;
標準偏差σも20~100hPaの σ=24.9 mよりわるいし・・
⊿はプラスですが20~100hPaの⊿=41.9mより小さくなっています
(まあ、こうなってほしいのですが・・gの影響の可能性もあります)
私は測高公式をバカにしていたのですが・・
かなり強力な方法みたいです。

2-3  201~250hPa
資料数からいくと、200から300hPa位をターゲットに観測をしていたみたいです。
(ジェットが見たかった?)
 
平均          ⊿=24.1 
平均の標準偏差  σ= 21.5 m
平均高度     H= 9980.6 m
平均気圧     P= 228.6 hPa




⊿、σは小さくなりました。

2-4  251~300hPa
平均          ⊿=22.0 
平均の標準偏差  σ= 19.0 m
平均高度     H= 8938.9 m
平均気圧     P= 275.6 hPa










 201~250hPaでは
平均高度     H= 9980.6 m
平均気圧     P= 228.6 hPa
でしたから
⊿P/⊿H=(228.6- 275.6)/(9980.6-8938.9)=-0.045hPa/m
100m上昇する毎に4.5hPa下がる割合ですね。
地上(1013hPa)付近では100m毎に12か13hPa(1%位)下がると記憶してます。
すこし気圧の下がり方がきつい気がしますが気温が低いためかもしれません。
 
⊿、σはやや小さくなりました。
地上に近づいてくれば測高公式による精度はよくなるはずですから、
σは小さくなるの筋の通った結果です。
私としては⊿は積みあがってもらいたい量(気体成分以外の固体成分)です。
説明は省略しますがCalucによる簡易計算でgを9.8にすると
⊿が地上付近から直線的に積みあがってくれないのです。
9.82以上にすると地上付近から直線的に積みあがりました。

2-5  301~434hPa
平均          ⊿=18.6 
平均の標準偏差  σ= 18.3 m
平均高度     H= 7900.1 m
平均気圧     P= 324.6 hPa




データ数(952)がちょっと少なく心配でしたが⊿、σは順調に小さくなりました。
グラフを作った時のデータの様子を示します。

temp hum hight1 ⊿ hight2
-67.3 **** 15140 36 15104
-78.7 **** 14490 73.4 14416.6
-72.2 **** 15040 33.8 15006.2
-73.2 **** 14730 28 14702
-79 **** 14260 18.8 14241.2
-82.8 **** 14740 62.9 14677.1
-72.6 **** 14840 73.4 14766.6
-40.2 **** 15720 43.6 15676.4
-66.1 **** 14770 26.8 14743.2
-71.2 **** 14900 -7.2 14907.2
-78.5 **** 14620 13.7 14606.3
-74.7 **** 14600 30.8 14569.2
-64.1 **** 15140 10.5 15129.5
-73.5 **** 14780 13.9 14766.1
-74.1 **** 14770 -19.7 14789.7
-83.2 **** 14330 -0.1 14330.1
-78 **** 14370 2.6 14367.4

hight1が観測値です。
個人的な感覚で申し訳ありませんが、地上から風船とばして10000mの高度を観測しても
多分±10m程度の誤差しかないと思います。
誤差は、地上付近から測高公式によって計算した積み重ねの結果と考えるのが自然だと思います。
(我田引水);


3.平均⊿の高度依存性
平均⊿は高度の観測値から測高公式で計算した値を引いた値です。
平均値ではありますが今回の結果はすべて
観測値<測高公式
観測値>測高公式
となりました。
このような結果を説明する仮説は
「ゴミみたい物質(エアロゾルとか氷ちか)が上空にもあるかもしれない」(あってほしい);
と言うものです。
*****
お詫び
この仮説は誤りです。
実際の高度ほうが高いので、この論法でいくと空気の平均分子量が小さいことになります
不思議ですね・・
これは、測高公式に問題があるようです
*****

まあ、この程度の調査(そもそも調査の目的も違う)でこうした仮説を扱うのは無理だと思います。

今回の結論は
「統計的に10000m程度の高度は測高公式で推定できそうだ」
です。
下層の高度は真値(観測した高度)がありませんから推定できるかわかりません。

余計なことが多くなりました高度別の⊿のグラフを示します。
 


横軸が高度で縦軸が⊿です
 
高度の目盛りを0mまで延長したのは高度0mで⊿が0であってほしいとの願望の表れです(^^;
 
ついでに気圧別のグラフは次のようになりました。


09時と21時データを1968年3月から2015年12月まで気象庁のホームページからダウンロードしました。
約47年間分のデータですから約半世紀分です
今回は09時データのうち1968年3月から1980年1月までの約11年分を扱ったにすぎません。
データは莫大でどのように扱ったらよいのか試行錯誤ばかりです。
Calcやエクセルで辛抱強く計算を繰り返すのあきらめました。
今回の結果が残りのデータを補間できるのか?
この疑問は、これから調べなければなりません。
まだ報告できるような状況ではないのですけれども、測高公式は使えそうなので報告することにしました。