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2013年6月13日木曜日

フェーン現象と説明された事例

20130612日、新潟県高田市の最高気温は35.9℃まで上がりました。
気象予報士はフェーン現象で上がったと解説します。
フェーン現象は湿った空気が山を越える過程で水蒸気が降水となり、その潜熱で空気を暖めます。
暖まった空気が、山を吹き下りてくる際に100m降りてくる毎に1℃上がる。
こんな感じで説明されます。

1.フェーン現象
「湿った空気が山を登る。」
これは、まあよいでしょう。
登るとき、エネルギー保存則から空気のエンタルピーと呼ばれるエネルギーが位置エネルギーに変わります。
エンタルピーはCpTで温度Tに比例します。
この温度変化が位置エネルギーになります。
CpΔT=mgΔh
左辺にマイナスが付くのは、温度が下がると高さΔhだけ昇ったことを意味します。
本来は、100m毎に1℃下がるはずですが水蒸気があると水蒸気が雨になり、その際の潜熱により100m毎に1℃下がりません。
こうした空気が山を降りる際100m毎に1℃上がります。
図にすると次のような感じです。図は天気の部屋から拝借しました。(申し訳ありませんが、中身は読んでいません。)


私はこうした説明を聞くたびに
「何故、温かく軽くなった空気が吹き下りてくるのだろう?」
 と思っていました。
 図は1000mまで、100m毎に1℃温度が下がります。
 この場合1000mはたしか凝結高度とか呼ばれるものです。
 10002000mでは100m毎に0.5℃下げています。
 この割合は、水蒸気の量によって変わってきます。
 日本海側に吹き下りる時は100m毎に1℃上げています。
 この図から日本海の水蒸気圧は低くなるはずです。

2.20130612日の最高気温
 20130612日は台風3号が関東の南に進み、関東では東よりの風が吹き雨を降らせましたが日本海や西日本は晴れて気温が上がりました。
 気象台等で観測しているベスト10は次のとおりでした。
高田  35.9
豊岡  35.1
津山  34.8
山口  34.5
松江  34.4
高山  34.3
舞鶴  34.2
日田  33.9
鳥取  33.7
和歌山 33.6
次の図は2013061215時の地上天気図です。


次の図は061215時の各地の気温です。

おおよそ関東は2023℃といった所ですが東海や日本海側では30℃程度になっています。
こうした現象を気象予報士さんはフェーン現象で東海や日本海側で気温が上がったと解説した訳です。
フェーン現象の説明では関東の水蒸気が雨になり、乾燥して東海や日本海側に吹き下りたことになります。
フェーン現象ならば、東京の水蒸気圧は高田市より高いはずです。

3.東京と新潟高田市の水蒸気圧
次のグラフは20130612日の東京と新潟県高田市の水蒸気圧です。

ほとんど、水蒸気圧はかわりません。
確かに東京のほうが少し水蒸気圧は高いようですが・・
水蒸気圧はあまり変わりませんが気温が大きく違いますから、確かに高田市の相対湿度は低くなります。
しかしこの程度の水蒸気圧差で、22℃と30℃の違いが説明出来るのでしょうか?
次のグラフは東京と高田の地上相当温位です。
相当温位になじみが無い方は水蒸気を全部水した潜熱で、空気を暖めた温度と思って下さい。
温度は絶対温度でプロットしています。



日中は高田市の相当温位が高くなっています。
このことは、水蒸気を含めた空気のエネルギーが高田市のほうが大きいことを示しています。
フェーン現象が起きたのなら東京と高田市の地上相当温位は同じになるはずです。
この日の日本海側や東海の高温はフェーン現象では説明できません。

4.長野市の最高気温
この日、長野県長野市の最高気温予想は28℃でした。
多分、予報官は最高気温ガイダンスと呼ばれる統計資料を採用したのだと思います。
私は予想資料を見て、12℃高くしたほうがよいのかなと思いました。
その資料を見てみます。
次の図は1212時、925hPa気温予想です。

長野市あたりの温度は24℃と予想されています。
温位は304Kとなります。
これは、地上を1000hPaだと仮定すると地上の温度は30427331℃になることを意味しています。
273273kで0℃の絶対温度表示です。
これから先はさじ加減なのですが、長野市の標高は400m程度あり地上気圧は1000hPaに達しません。
31℃まで上がらないだろうと考えましたが、28℃は少し低いと感じました。
私が気温ガイダンスを修正するときは基本的にこうしたテクニックを使います。
古いタイプの予報官は天気が晴れる時経験的に最高気温予想は850hPaの温度に乾燥断熱減率から予想される温度差を加えます。
これは、日中、晴れた時の空気は理想気体になると仮定することと同じです。
このときも私は経験的に長野の空気は理想気体のような振る舞いをするようになると考えたのです。


偶然かもしれませんが、612日の長野の最高気温は29.8℃でした。

2013年6月5日水曜日

2013年6月5日予想

気象庁は650510分に東京多摩地方に雷注意報を発表した。
資料をみるとしかたないかな?
多摩全域は広すぎるとはおもいますが・・

イニシャル0421時の実況の解析図です。
500hPaのマイナス12℃線が本州中部にかかっています。500hPa、マイナス12℃の飽和相当温位は328Kです。また、マイナス15℃の飽和相当温位は323Kです。


これは509時の予想図です。

521時の予想図
寒気はやや南下しマイナス12℃線は12時に関東沿岸まで南下しています。500hP、マイナス12℃の飽和相当温位は328Kです。この値を目安に850hPa925hPaを調べればよいと思います。



421850hPa相当温位の解析図です。
関東内陸に広く330kと解析されています。328kより高い所のSSIはマイナスと計算されているはずです。


5日09時850hPaの相当温位の予想です。
関東沿岸の風は南西風ですが太平洋の相当温位は低いですから、乾燥した風が内陸に吹いています。
群馬県や茨城県あたりを中心に325kを超える相当温位が予想されていますが、421時より低くなっています。

421時の925hPa相当温位解析図です。
850hPa同様330K以上のエリアが関東に広く解析されています。
関東の内陸部は雷雨になっていてもよさそうですが・・?
エコーがでたのでしょうか?
私は実況を確認していません。


421時、850hPa温度の解析図です。
長野県に12℃とやや低い温度が解析されています。
850hPa12℃の飽和相当温位は328k、13℃の飽和相当温位は332K14℃は335kです。
925hPaの相当温位が335kの所で雷雲が発達してもよいのですが、ほとんど山の山頂でモデルの「くせ」かもしれません。(山岳で雷雲を発達させやすくしている可能性があるってことです。)

421時、館野の実況は自由対流高度が6000mで、とても雷雲が発達するとは思えません。
5日09時の実況は
自由対流高度は2500mで、これクラスの山岳では9時に積雲が発達しだしていると思います。


509925hPaの予想図です。
850hPaと同じで関東の相当温位は弱まっています。MAXでも330Kです。


長野12℃線はほとんどなくなりました。
昇温を予想しています。

925hPaの相当温位が332K以上にならないと850hPa925hPa間SSIはマイナスになりません。


512850hPaの予想図です。

512925hPa相当温位の予想図です。
335K以上の所で雷雲が発達するかも?
下層(925hPa)の暖気の移流があるわけではないので完全な熱雷です。
実況は次のとおりです。

雷雲は、山肌に沿う上昇流によって発達するから山頂付近にエコーが出ていると思います。
今のところイメージのとおりです。


515850hPaの予想図です。
山岳で昇温しています。15℃の飽和相当温位が338Kです。15℃線の周りが要注意です。

515925hPaの予想図です。
925hPa相当温位335hPaで雷雲が発達しそうです。
沿岸部は海から乾燥した空気が入ると予想されています。
エネルギー(水蒸気)の供給はありません。

15時の実況は次のとおりです。
長野県中部のエコーが予想外です。
松本盆地あたりでしょうか?
850hPaの温度予想が外れているのかもしれません。
850hPaの温度の昇温は日変化(日射による昇温)です。
温度が上がる主な原因は山肌が日射で暖められるためです。
盆地の上に山肌はありませんから盆地での850hPaの昇温は過大なのかもしれません。
モデルのくせかもしれません。
一夏予想図を見れば、くせかどうかわかるでしょう。



18850hPa温度予想です。
14℃の飽和相当温位は335Kです。

雷は群馬県と栃木県北部あたりが中心になりそうです。
18時の実況は次のとおりです。
予想図より群馬県と栃木県北部のエコーは弱い印象です。
終わりかなって感じです。雨は多少長引かも知れませんが新なたエネルギーの供給はありませんから再発達する可能性は低いと思います。
NHKラジオの予報士さんは、湿った空気が入ってなんて言ってましたが、予想図をしっかり見ていないのですね。
予報士さんもそろそろ競争する時代になってほしいなあ。



521850hPa温度予想
1315℃(飽和相当温位332338K)です。

521925hPa相当温位予想。
群馬県北部で雷雲が残るようです。


5日は午後、関東の山岳中心の雷って感じです。
さて、どうなりますか。